∵ 幸せそうに眠る君には手出しできない

ヒメコとボッスン





キャプテンと立ち話をしていたらすっかり遅くなってしまった。

「遅くなってすまんなー…」
部室のドアを勢いよく開けたのとは対称的に室内は静かだった。
「なんや寝とるやん」
畳の上で横になって寝息を立てる後ろ姿が見えた。
スイッチは用事があるのだろうか。来ていなかった。

「落書きするチャンスや」
ペンを持ち畳に近付く。
窓際にぴっちりと畳が置いてあるため寝ている本人の顔を覗くのに多少無理な体制をとることになる。壁とボッスンの間に片足、もう片足は跨ぐような格好になる。

なんか恥ずかしな…はよ書いたろ

ペンのキャップを開け、いざ顔を覗くといつもの顔とは違って見えた。

コイツは、どれだけのもんを背負ってるんやろ

きっとそれは、すごく重い。それでも幸せそうに眠っているように見えたりする。

いつのまにかペンのキャップは閉まっていた。

「いつもありがとうな、ボッスン」




幸せそうに眠る君には手出しできない


2011.07.11

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