∵ 二人きり

二年生は校外学習で今日はいないらしい。
前日に椿ちゃんから渡された書類に目を通す。
本当なら安形がやるべき仕事だ。当の本人は会長用のデスクで寝ていた。
寝息は外で活動する部活の声で聞こえない。

書類といっても所詮生徒が扱える程度の軽い物で、あっという間に作業は終わる。

窓から入る少し強めの風は気持ち良いがプリントがあちこちに飛んでしまう。

あーあ

椅子を引き重たい腰を上げミモリンの席あたりに落ちたプリントを拾うべく膝を曲げる。

「ミチル」

床に影が出来たから安形がこちらに来たのだろう。

「何?起き…」
顔をあげると触れるだけのキスが降る。

「そんな嫌そうな顔すんなよ」
「いや、いきなりだなーと思って」
「いきなりじゃダメとか誰が決めたんだよ」
「別に誰も決めてないけど。さっきまで寝てたじゃない」
「あー…変な夢みてな」
「へえ、どんな?」
「ミチルがとられる夢」
「なんだよそれ」
「なんなんだろーな」
「そろそろ帰ろっか」
「そうだな」


ん、と手を差し出す安形に
まだ校内だからダメ、と手を繋ぐ約束をして生徒会室を後にした。
絵の具を混ぜたみたいな夕焼けがやけに眩しかった。



2011.07.10

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