∵ 七夕-笹と巡回-

部室に足を踏み入れるよりも先に目に飛び込んできたのは笹だった。

「色々ツッコミたいねんけど…これどっから持ってきたん?」
「ますらお幼稚園で余ったからって貰ってきたんだ」

「で、お前は淡々と何を作っとんねん」
『見ての通りだ』
スイッチの首には折り紙を細く切って丸めて繋いだものが掛かっていた。
「幼稚園か!高校生がやることちゃうぞ!」

「見てみろヒメコ!オレの短冊!」
目の前に突き出された短冊には願い事が全て叶いますようにと書かれていた。
「願い事一つに絞れへんからってむちゃくちゃやなお前」

「お前も書けよ」
「ええー?アタシも?んー何にしよかなー」

『オレも書けたぞ』
「なんやなんて書いたん?」
『世界征服!』
「ふざけとるやろお前」
『いやあなかなか決まらなくてな』

「ていうかアタシら3人でこの笹はデカすぎひん?」
「ああ、みんなにも書いて貰おうと思ってよ」
「おお、ええやんそういうの!短冊もう渡してあるん?」
「いや、今から」

「ほなアタシここで待っとるわ」
「なんでだよ来いよ!一人じゃ運べねーんだから」
「運ぶ?何を」
「笹に決まってんだろ」
「いや短冊持ってって書いて貰うだけちゃうんか」
「自分で吊さなきゃ意味ねーだろ」

「アタシなんで誕生日にこんな重労働せなアカンねん」
「じゃあスイッチ」
『オレは嫌だぞ』
「お前ら動けよ!」
「もうお前願い事力持ちになれますように、にしとけ」
「なんで!?」

『短冊を配るだけなら行ってやってもいいぞ』
「上から目線!?」
「せやな。配るだけなら行ってやってもええで」
「お前らなんか企んでんだろ!」
「別に企んでへんけど、しいて言うなら駅前の七夕限定クレープが食べたいなあ…」
「企んでんじゃねえか!」
「冗談や」
「冗談かよ!」
「え?何?おごってくれるつもりだったん?」
「ああもううるせーうるせー!ほら早く行くぞ!」
「ええーほなアタシとじゃんけんで勝ったら動いたるわ」
「お前動く気ないだろ!」



七夕-笹と巡回-

2012.07.07

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