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02.冷血と優しさ





「なんか後味悪いな…。」


倒れたライガクイーンを前にして、その後ろに見える割れた卵を前にして、俺は複雑な気分だった。

今までだって魔物を倒し、殺しながら進んで来たのに。

それでも、これから生まれる筈だった、在る筈だった存在を消してしまった自分が、少し怖くて。


「優しいのね。それとも甘いのかしら。」


俺はその言葉に睨むような視線を送った。

なんでそんな言い方しか出来ないのか、と。

もっと良いやり方があったのではないか、と。

……本当は分かってるけど。

これが一番のやり方なんだ。

人に被害が出ない、このやり方が。

それでも、納得出来なくて。


「…冷血な女だな!」


嫌味を込めて言ってやる。

正直にそう思ったから。

反論すらして来ない相手に、俺の怒りは沸き上がるだけだった。

でも、一瞬。

一瞬見せたティアの表情は、その考えを一気に消す物で。

悲しそうな、辛そうな。


その時、漸く気付いたんだ。

表に出さないだけで、ティアも同じ気持ちなんだと。

だけど、気持ちを押し殺してしまうんだ。

軍人だから。

凄く、申し訳ない気持ちだった。

何故だか、分からないけど。


「…ごめん……」

「……何か言った?」


振り向いたティアは、いつもの彼女で。

俺は黙って首を横に振った。


「何でも無ぇよ。」


気付かないふりをするのが、俺の優しさ。

それくらいしか、俺には出来ないから。

黙っておこう。





彼女は優しいから。





02.冷血と優しさ-end-





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