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笑いながら話すイオンに、シンクは言い返すのを止めた。


自分が一番不幸だと思い込もうとしていた事に気付いたから。



「シンク。死後の世界では、皆に会えるのでしょう?」


「…さぁね。」


「でも、そこがどのような所かは分かりません。…真っ白な世界、真っ暗な世界。もしそれが闇の世界なら…同じ場所にいても、気付けないでしょうね…。」


「ああ、そんな事を考えてたから部屋中真っ暗だった訳ね。」



シンクは納得したように声をあげ、イオンは黙って頷いた。



「じゃあ、もう一度…試してみる?」


「え?」



突然のシンクの提案に、イオンが返事をする間もなく電気が消される。


再び訪れた闇。



「シンク…?」



返事がない静寂の中、イオンは手探りでシンクを探した。


時折机らしき物にぶつかりながら、手を必死に伸ばす。



「シンク…っ…」



不安で思わず相手の名を呼んだ時、イオンの手は何かに触れた。


先程と同じ感覚。


イオンが確認しようとする前に、その手は軽く握り返された。



「シンク…?」



見付けられた安心と同時に首を傾げる。


シンクがしっかりとイオンの手を握っていたから。



「…ほら、見つけられた。」


「え?」


「例え周りが見えなくても、手探りで進んで行く。同じ場所に居ると分かってるなら尚更。諦めずに手探りで進み続ければ、必ず見つかる。」



ゆっくりと手が離されると同時に、再び電気がついた。



「そうやって、ヒトは生きるものだろ?」



突然の光に対応し切れない視界ははっきりしなかったが、シンクが笑ったのを見た気がした。



「…無駄話が過ぎたね、僕はもう戻るよ。」



先程の書類を手にしたシンクは仮面をつけ、最初と同じように背を向ける。



「…シンク。」


「何?」



今度は振り向かないままの返事。


それでも、イオンは優しく微笑んだ。



「僕がもし死後の世界に行けたなら、必ず貴方を探しますよ。」


「…期待しないで待ってるよ。」



――パタンッ



静かに閉じた扉を見つめてイオンは呟いた。


閉じた扉に背を預けてシンクは呟いた。





ありがとう――…





-end-





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