10 ――ルーティside―― 本当は馬鹿スタンをエイプリルフールで騙してやる予定だったのに。 部屋に運ばれネタ晴らしの前にリオンと二人きり。 大体、今日の為にわざわざ昨日から咳真似して前振りしてやったのに、気付かなかったってどういう事よ! 後で殴る…。 でも、リオンが気付いたなんて意外。 アイツの事だし、アタシの方なんて見向きもしないと思ってたのに、見てくれてたんだ。 …ん?額に温かい感触。 バレないようにうっすらと目を開けると、リオンの掌だった。 「…熱はないみたいだな。」 『…やっぱりただの風邪では?』 「だが、倒れる程だ…もっと別の病気かもしれん。」 『アトワイト、何か知らない?』 『さ、さぁ?私も良く分からないの。』 アトワイトの口止めしといて良かった、と内心ホッとする。 でも、リオンがアタシの心配してくれてるなんて…これもまた意外。 とことん嫌われてると思ってたし。 「…ん?」 小さく声を上げたリオン。 何かしら、目を開けて確認出来ないのが苛立たしい。 なんて思っていたら 「…起きろ、馬鹿女。」 え、誰の事よ。 「狸寝入りは止めて、さっさと起きろ。」 …アタシ? 「ルーティ!」 「はい!」 ――ゴンッ 諦めて目を開けると同時に体を起こそうとしたアタシの頭は、リオンの頭に直撃。 「…っ…急に起きるな、馬鹿女!」 「なっ…アンタが起きろって言ったんでしょ?大体、乙女の寝顔を覗き込むなんて失礼ね。」 「フンッ。誰が乙女だ、狸。」 「アタシはスタンを騙そうとしただけ。何でアンタまで此処にいるのよ。」 『ルーティ、今の言い方は酷いわ。リオンさんは貴女を心配して…』 「違っ…僕は…」 「ああ、わざわざ熱まで計って心配してくれたものねー。」 「……。」 「まぁ一応言ってあげるわ。ありが……」 「デモンズランス――っ!!」 「きゃーっ何すんのよアンタ!人が折角礼を…」 「黙れ!そこに直れ!」 「何様よアンタ!」 こうして始まった二人の戦いはスタンが帰るまで続き、宿を破壊した二人は結局寒空の下に晒され、次の日本当に風邪で寝込む事となった。 -end- ← back |