9 「大変だ…!」 いつも以上に騒がしいスタンは、ノックもせずに僕の部屋に踏み入れた。 田舎者に礼儀なんて望むだけ無駄か。 「リオン、どうしよう!」 「何なんだ、一体。」 「ルーティが倒れた!」 「何?」 今日は珍しく全員が自由行動と言う理由で、久々に一人静かな読書の時間を過ごしていたのだが。 その言葉で一転し、僕はスタンの案内の元、ルーティの部屋へ走った。 「ルーティ!だ、大丈夫か!?リオン連れて来た!」 ベッドに横になったルーティに駆け寄るスタンは、完全にパニック。 「俺達、一緒に装備とか揃えに行ってて…そしたらルーティが突然フラリとその場に倒れちゃったんだ!どうしよう!ファーストエイド…医者!」 「落ち着け、馬鹿者。」 ――ゴンッ 目を覚まさせる為に、シャルで後頭部に一撃入れてやった。 痛みのあまりその場に蹲ったスタンを押し退けルーティに近付く。 「…呼吸に乱れはない。…恐らく、風邪だろうな。」 「か、風邪!?何で分かるんだよ、リオン!」 「昨日コイツが咳をしていた。…お前と話している時だったが、気付かなかったのか?」 「…全然。」 「…はぁ…少しは洞察力を鍛えろ。」 「わ、分かった…それで、俺はどうすればいいんだ?」 「とりあえずは薬だな。」 「薬…薬……」 スタンが救急箱を覗く。 しかし、スタンの様子からして風邪薬はきらしているようだ。 「リオン…風邪薬、無いみたい…」 「ならば買いに行け。」 「俺が!?」 「この寒空の下、僕まで風邪をひいたらどうする。」 「俺は?」 「馬鹿は風邪をひかないと決まっているから安心しろ。」 「何だよそれー!」 「いいかさっさと行け。」 ――バンッ スタンを蹴り飛ばし、半ば無理矢理部屋から追い出すと、僕はルーティの寝るベッド脇に腰掛けた。 _ ←→ back |