8 早速とばかりに興味を示したアリエッタ。 「イオン様、何か嘘ない…?」 「はは、アリエッタ。嘘は相手に黙って言うから嘘なんだよ?自分で考えなくちゃ。」 「うんと…本当じゃない事……」 直ぐに何か思い付いたらしいアリエッタは、満面の笑顔でイオンに言った。 「アリエッタ、イオン様の事大嫌い、です!」 「…は?」 思わず顔が引き釣ったのがバレていない事を願う。 「イオン様の事、大っ嫌い、です!」 「アリエッタ?……ああ…」 漸くイオンもそれがアリエッタなりの嘘だと気付く。 しかし…… 満面の笑顔で「嫌い」と連呼されるのは何とも辛いものである。 「イオン様大っ嫌いー!」 つまりイオンは「大好き」と言われているのだろうが…。 初めての嘘で楽しいらしいアリエッタは、叫ぶ叫ぶ。 「イオン様嫌いー、大っ嫌いー!」 本当に自分の事を嫌っているのではないかと思わせる満面の笑顔。 本人は楽しんでいるだけでもやはり…。 この時ばかりは教えなければ良かった、と後悔したイオンも、ただ黙って聞いているのも辛い。 だから少し意地だったが、言い返してみた。 「僕もアリエッタが大嫌い。」 …しかも満面の笑みで。 するとアリエッタは叫ぶのをピタリと止め、みるみる泣き顔へと変わり、泣き出してしまった。 「ええっ!?」 流石に驚いたイオンは慌てて駆け寄るが、一向に泣き止む気配がない。 「アリエッタ、嘘だよ嘘!ほら、エイプリルフール!」 「でもやだぁ〜……イオンさまに嫌われるのやだ〜っ…!」 そう思うなら、此方の気持ちにも気付いてくれよと内心呟くが口には出せず、ただアリエッタの頭を撫でて宥めるイオン。 「ほんとに、うそ…?」 「本当だよ。アリエッタの事、大好きだから。」 「………」 漸く泣き止むと思ったが、アリエッタの目には再び涙が浮かぶ。 「…それも、うそ…?」 「へ?」 「イオンさまやっぱりアリエッタの事嫌いなんだ…やだぁ〜…!」 どんどんややこしくなる話。 そうしてアリエッタを宥められたのは数時間後の話で。 エイプリルフールなんて二度と来るなと思ったイオンでした。 -end- ←→ back |