7 アリエッタを育て始めてどれくらいになるだろう、とイオンは考えていた。 目の前で走り回るアリエッタは既に沢山の言葉を覚え、ぎこちなくも周りの人と会話出来るようになっていた。 そんなアリエッタの成長を見るのは、イオンにとって苦しくも楽しみな物で。 自分がいなくなるまでに、可能な限りを教えようと思った。 ただ、レプリカの事を除いて。 「イオン様、考えごと…?」 「ああ、何でもないよ。それより、さっきからアリエッタは何をしてるの?」 「蝶々さんと追い掛けっこ、です!」 「…へぇ。捕まえられた?」 「蝶々さん、高い所飛んで行っちゃって、駄目だった…です。」 「そっか……」 そりゃそうだろう。 アリエッタにとっては楽しい追い掛けっこでも、蝶々にとっては命がけの追い掛けっこ。 そんな蝶々の気持ちを悟るなんて、アリエッタにはまだ出来るはずもなく。 「また見付けたら、次はお友達にも協力して貰う、です!」 ライガ達は捕まえるってより、潰したり食べたりするんじゃないか、なんて疑問は飲み込んで。 「捕まえたらイオン様にも半分あげる、です!」 「はは、ありがとう。」 半分ってそれは……考えるのはよそう。 「それよりアリエッタ、今日は何の日か知ってる?」 「…今日?」 案の定知らないアリエッタは、ふるふると首を横に振った。 「今日は、エイプリルフールって言うんだ。」 「えいぷり…る…ふーる……えいぷりるふーるっ!」 一回で言えた事が嬉しいらしいアリエッタは、意味が分からないまま何度もそれを繰り返した。 「エイプリルフールっていうのはね、嘘をつく日なんだよ。」 「うそ?」 「そう、本当じゃない事を言っても許される日なんだよ。」 「うそ…アリエッタも、嘘言いたい!」 _ ←→ back |