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「…すー……」



書類に向かってペンを持ったまま、静かに寝息をたてるイオンだった。



「イオン様……」



疲れているのに無理をしていたのだろうと、心なしか胸が痛む。


アニスは起こさないようにそっと近付こうとしたが、浅い眠りだったらしいイオンの目はパチッと開いてしまった。



「アニス…?」


「あっ…えっと…おはようございます、イオン様。」


「あ、すみません。寝てしまっていたみたいですね。直ぐに書類終わらせますから……」



そう言って再びペンを走らせようとするイオン。


アニスは思わずイオンの腕を掴んで止めた。



「アニス?」



きょとんと不思議そうにアニスを見るイオン。


アニスはいつもの笑顔を向けて言った。





今日一日は、仕事を休んで良いそうです――…





そうして二人で仕事をすっぽかして来たのは、ダアト教会の中庭。


アニスはゴロンと横になって、トクナガを枕にした。



「…本当に良かったのでしょうか…書類が沢山残っていましたが……」


「良いんですよぅ!珍しくモース様が気の利いた事を言って下さったんですし!」


「そう、ですね…。お言葉に甘えましょう。」



そう言ってアニスの隣に並んで横になるイオン。


……そう、これがアニスの吐いた嘘。


隣で微笑む導師の為に吐いた、優しい嘘。


疲れの溜っていたイオンは、いつしか深い眠りに落ちていて。


その寝顔を見ながら、アニスも小さく微笑んだ。



「私もこんな嘘が吐けたんだなぁ〜。」



なんて、無意識に緩む頬に気付かないまま、アニスも深い眠りについた。





貴方の為の嘘は


こんなにも心地よい





ゆっくり休んで日が沈むまで寝た二人が戻ると、カンカンに怒ったモースがいて。


嘘だったと気付いたイオンは、やっぱり怒る事なく笑ってました。





-end-





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