5 「イオン様〜っ!」 「はい、どうしました?アニス。」 優しい笑顔で顔を上げるイオンに、アニスは申し訳なさそうに書類を差し出す。 「ごめんなさい、追加みたいです〜…」 「…そうですか…。いえ、謝る必要はありませんよ。アニスが悪い訳ではないんですから…ね?」 「でも〜…モースの奴ぅ…っ」 疲れが目に見えているイオンをこれ以上働かせたくなくて。 アニスはいつかモースにトクナガパンチをお見舞いしようと心に決めた。 そんな時期のエイプリルフール。 アニスは悩んでいた。 「折角だから何か嘘つきたいんだけどなぁ〜……」 今までの記憶を掘り起こす。 『イオン様、イオン様!』 『何ですか?アニス。』 『根暗ッタの乗ってるライガって食用らしいですよ!(←嘘)』 『そうだったんですか…!誰かに食べられたりしたら、アリエッタが悲しみます……。』 『……なぁんて、冗談ですけどね!』 『え?』 既に【食用ライガ保護】の書類を作り始めていたイオン様。 食用ライガなんて無いですよ。 また別の日。 『イオン様、イオン様!』 『はい、アニス。何ですか?』 『シンクの仮面ってクッキーで出来てるらしいですよ!(←嘘)』 『そうだったんですか!非常食でもあったのですね……』 『……なぁんて、冗談……あれ?イオン様?』 既にその場にいなくなっていたイオンはシンクの前に居て。 『シンク、僕にも少し味見させて頂けませんか?』 『……は?』 『そのような便利な物でしたら、教団内に普及してみようかと思いまして。』 『…何の話?』 『勿論、貴方の仮面……』 『わああぁぁぁっ!ごめん、シンク!何でもないから!』 慌ててイオンの口を塞いで自室で謝った。 嘘だったと謝っても、怒る気配すら見せずに笑って済ませてくれる。 …イオンは、人を疑う事を知らない。 「駄目だー!あのイオン様を騙すなんて罪悪感がー!」 廊下で一人叫びながら歩くアニスは、結局何も思いつかないままイオンの部屋へ着いてしまった。 「うう……失礼しまーす……」 ゆっくり戸を開けて視界に入ったのは _ ←→ back |