3 只今六神将の会議中。 最近は難しい話ばかりでアリエッタにはよく分からず、殆んど聞いていないため暇を持て余していた。 人形をきつく抱き締めながら足のつかない高さの椅子で、足をぶらぶらと揺らしている。 「暇、です……」 一人呟くが、真剣な周りは全く気付かない。 アリエッタは顔を上げ、皆を相手に作戦等を細かく話していく彼、シンクを見つめた。 いつも堂々としていて、自分の意見をはっきり言えて、頭も良くて、優しくて、格好良くて…… そこまで考えて思わずアリエッタの思考は止まる。 自分は何を考えているのだ。 そして一人恥ずかしさに襲われ、シンクを見ていられなくなり、人形に顔を埋めた。 会議が終わると、皆それぞれ自分の部屋へと帰っていく。 そして最後に書類等を片付けてから帰ろうとするシンクを見つけ、アリエッタは駆け寄った。 「…っシンク!」 「ああ、アリエッタ…」 「あの…お疲れ様、です……」 「どうも。…約一名全く聞いてくれてない人もいたみたいだけど。」 直ぐ様自分の事だと分かり、申し訳なくて顔を俯かせる。 「…まぁ、いつも通りアンタ用に分かりやすくまとめた書類持ってくから。」 「あ、ありがとう…です。」 「で、何か用なんだろ?どうしたの?」 「あ、えっと……」 実は特に用事もなかった為に口ごもる。 しかしそこではっとするアリエッタ。 今日はエイプリルフール。 シンクに嘘をつこうと。 「…あ…シンク!」 「何?」 「えっと…キスして欲しい…です!!」 「…は?熱でもあるの?」 聞き返されれば、自分は馬鹿な事を言ったのだと恥ずかしさから顔が赤くなる。 「…だめ…?シンク、アリエッタの事…きらい…?」 思わず涙目になって問うアリエッタ。 自分が嘘のつもりで言った事など忘れて。 「…いや、嫌いとかじゃなくて……」 「じゃあキス…!!」 だだっこにしては内容が凄いと冷や汗を流しながら、誰にも聞かれていないだろうなと周りの気配を探るシンク。 しかし、ふとシンクは笑みを浮かべた。 _ ←→ back |