2 「不味い…」 いきなり顔を離したシンクはクッキーを飲み込んで呟いた。 「アンタ、砂糖と塩を間違えただろ。」 「へ!?嘘…っ」 慌てて自分もクッキーを口にすると、確かに塩辛い。 自分には飲み込めず、シンクが差し出したティッシュに吐き出した。 「うえ〜…不味い……」 「こんなんで口移しなんて、共倒れでもする気だったの?」 「違っ……あ、えっと……」 全て嘘だと言うタイミングを逃してしまったアニス。 しかも先ほどのシンクの行動の所為で顔の熱が引かない。 「…まぁ今日1日時間あるなら、また作り直せば……」 「あのね、シンク!」 「何?」 「…ごめん、全部嘘なんだ〜…」 「…は?」 「き、今日はエイプリルフールって言う、嘘をついても許される日なの!」 「…ふぅん。全部嘘だったんだ?」 怪しげな笑みを浮かべるシンクにアニスは後退さる。 「怒っちゃ駄目だよシンク!許さないと!」 「分かってるよ、別に怒ってないし……」 いつの間にか壁際に追い詰められていて、背が壁に当たる。 「怒ってないけど…」 「ないけど…?」 「そこまでしてアニスは僕と口移しがしたかったんだな、と……」 アニスの顔は真っ赤に染まる。 「違っ…私はただ……」 からかおうと、なんて続けようとしたアニスの額にはデコピン。 「痛っ……」 「何となくムカついたから仕返し。」 「う〜…悔し〜っ…」 「でもさ、アンタに言われて思ったんだけど。」 「ん?」 「『恋人の日』なんていらないよね。愛を確かめ合うなんて、いつでも出来るんだし。」 「…いつ…でも…?」 きょとんとしていたアニスの顔はみるみる真っ赤に染まり 「次はまともなクッキー宜しく。」 そう言ったシンクの顔は満面の笑みだった。 -end- ←→ back |