4 4.彼女を縛り付ける。絶対的な存在 彼女の視線の先には、やはり導師。今の導師守護役と楽しそうに笑っている。 別人とも気付かず、彼女は未だアイツを愛しているのだろうか…。 「…イオン様…。」 彼女の口から小さく呼ばれたアイツの名前がとても憎たらしい。 お前は既に死んでいるのに、劣化品ですら立つ事の出来るこの世に居ないのに…名前と人形を残して彼女を縛り付けている。 「…シンク…?」 彼女の声で我に返る。無意識に導師を睨んでいたらしい。 と言っても、仮面があるので彼女には気付かれなかったが。 「…ん?何、アリエッタ。」 「…何でもない…です。」 そう言うと彼女は体を傾けて、僕の肩に頭を預けた。 「…ねぇ、アリエッタ…。」 「…?」 「もし導師守護役に戻れるなら…戻りたい?」 彼女は考える間も空けずに頷いた。 僕は所詮、導師の為に空いた心の穴埋め…代わりなのだろうか。 そう思うと少し悲しくて、意地悪を言ってみる。 「…そうなったら良いね。僕も静かになって嬉しいし。」 途端、彼女の頭は僕から離れて顔を此方に向けていた。 瞳一杯に涙を溜めて。 「…何で泣くのさ…。」 予想外の反応に戸惑い隠せず聞いた。 「シンク…アリエッタの事、嫌い…?」 「…は?」 「アリエッタが邪魔?必要無い?」 「…落ち着きなよ。」 「シンク…、アリエッタが邪魔って言ったぁ…っ…!!」 「…言ってないし…ああもう…泣き止みなよ…。」 「やだぁ〜…っ…シンクが嫌いって…」 「嫌いじゃない…!!」 思わず声を張り上げた僕に驚いたのか、彼女はビクリと肩を揺らして中途半端泣くのを止めた。 何を言ってるのだろうか、僕は。 「…ほんと…?」 「…本当だよ。でももし導師守護役に戻ったら、今より会えなくなるのは事実だろ?」 「…じゃあ、何で嬉しいの…?アリエッタは、寂しい…悲しい…嫌…です。」 嫉妬とは言えずに僕は言葉を濁らした。 「…冗談?」 「…っ…シンクのばかぁ…!!」 「アンタよりはマシな頭だよ。」 「酷い…!!シンクなんて…」 「大っ嫌い?」 「…じゃない、です。」 君の一言一言が嬉しくて、振り回されるんだ。 4.彼女を縛り付ける。絶対的な存在-end- ←→ back |