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3.世界はなげくほどゆがんでしまっている





今日もダアトには預言を聞きに来た人間が集まり、教会に群がっている。


「…馬鹿ばっかり。」


自分が預言に詠まれていない事に対しての妬みなのか、僕は思わず悪態を口にした。



「…シンクは…預言が嫌い…?」


いつも突然現れる彼女には慣れた。しかしその問いに答える事なく、僕は仮面の下から窓を通して外を見る。


「いつも…此処から外見てる…です。」

僕の無視に慣れたのか、彼女は言葉を止める事なく補足した。


「アンタはどうなのさ。」

「…アリエッタ…です。」

「…分かったよ。アリエッタはどうなの?」

「アリエッタは…好きでも嫌いでも無い、です。」

「はっ、何それ。答えになってないよ。」

「…預言を聞いて安心出来るなら聞く…嫌いなら、聞く必要は無い…と思う…。」


後者は恐らく僕の事だろう。身長差の為、上目遣いの視線が向けられている。…嫌いだから僕が聞きたくないと思っているようだが。


「随分と勝手な意見だね。必要なら使って、要らないなら使わないなんて。」

「…でも、アリエッタはそう思う…預言ばっかじゃ、希望を忘れちゃう…。」

「希望…?」


彼女の言葉を復唱するようにして聞き返した。


「…うん、希望…。預言はただの道標。預言を絶対なんて信じちゃ駄目、です。」

「何言ってるのさ。預言は絶対だよ。少しの歪みなんて関係無しに…」

「だから、それが駄目…希望を忘れちゃってる…。」


僕の声を遮って言葉を紡いだ彼女は上手い言葉が見付からないのか、人形に顔を埋めて色々思案していた。

こんなくだらない会話に何を必死になっているのだろうと思う反面、その相手が僕と言う事に小さな喜びを感じてしまう。


「じゃあアリエッタは、詠まれた預言に抗ってるの?」

「…アリエッタには、まだその勇気が無い…です。だから、預言を詠んで貰ってない…。」

「詠んで貰ってなくても、アンタの行動は全て預言に書かれてると思うよ?」

「…それでも、アリエッタは自分で選んだ道だと、信じる…です。」


小さな体で大きな夢を持つ君に、僕は思わず笑ってしまった。



「嫌いじゃないよ、その考え方。」





3.世界はなげくほどゆがんでしまっている-end-





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