3



―言っただろ?僕は空っぽだって。僕の存在は無意味なんだ。―



−言っただろ、僕は空っぽだって!−






その言葉が忘れられず、暇な時になったらぼーっと空を眺めていたアニス。

あれからもう、三年が経ってんだなぁと、ぼんやり思ったり…。


「アニス!!」


突然名前を呼ばれ、アニスは空から目を離した。


「何々?フローリアン」


同じ顔で、同じ声で、それでいて感情豊かな彼…フローリアンがニコニコしている。



「あのね、ぼく手紙かいたんだ!」

「誰に書いたの?」

「わかんなぁい!」


わかんないって…
天然なフローリアンに苦笑を浮かべつつ、アニスは受け取った手紙を窓の縁に置いて、また空を眺めた。








…どうしてこんなにも違うのだろう…


空に消えていった二人と、今ここにいる人物は、あまりにも違いすぎる。それぞれ個性がある。

…だからこそ…



「なんであんなこと言ったのよ…」


それは自然と口に出ていた。

自分の事を空っぽだなんて言うなんて…存在が無意味だなんて…自分を否定して…



「意志があるんだから…感情があるんだから空っぽじゃないのに…」


こんなにもあんたに苦しんでるのに…





ふわ…っ





包まれる感覚にはっとなって、その人物に目を開かせた。
フローリアンはぎゅっとアニスを抱きしめ、頬を伝う雫を指で拭った。


「ふ…フローリアン!?」

「……−」

「え…」


小さく、小さく聞こえた言葉は、フローリアンの発した言葉とは思えなかった。




アニスの手に、力がこもっていた。
目が熱くて、下唇を噛み締めて、堪えてはみるものの…



「どうして…あんなこと言って死んじゃったのよぉ…っ!」


頬からまた、雫が伝った。








緩やかな風が手紙を飛ばし、アニスのツインテールを揺らした…。





_





back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -