9 09.不幸 この生は不幸? それとも、奇跡と言う名の幸福? それを決めるのは、僕で。 預言には答えられない問い。 「幸せって、何?」 そう、ヴァンに聞いた事がある。 でもヴァンは、黙って微笑むだけだった。 今覚えば、ヴァンも分からなかったのかもしれない。 『幸せ』と言う存在が。 だから、僕と同じで。 だから、僕を助けて。 だから、一緒にいる。 「幸せって、何?」 こんな一言の問いは、何の意味も持たないけれど。 その問いの中には、数え切れない程の理由が在り、意志が在り。 答えられる人こそ、幸せなんだろう。 そう思った。 「幸せ…ですか?」 何故だろう。 自分でもよく分からなかったけど、そうアイツに聞いた事があった。 僕と同じ顔で、同じ存在で、必要とされた奴。 そうしたら、ヴァンと同じように微笑んで答えた。 「生きている事…ですね。」 意味が分からなかった。 こんな生を貰って、何故笑って幸せだと言える。 導師になれた事は、それ程まで変えるものなのだろうか。 「生きている事…とは、一言で言っても、沢山の意味を含みます。生きているから出来る事、全てを指す言葉ですから。」 出来る事? 僕は聞き返しそうになった。 それは、やらなければいけない事、ではないのかと。 「その中には勿論、貴方と出逢えた事も入っていますよ、シンク。」 優しく、柔らかく微笑んだ導師。 僕には、一生出来ないであろう表情。 出来るならば、死を迎える時か。 僕は何も答えずその場を去った。 これ以上、アイツの言葉を聞きたくなかった。 顔を見たくなかった。 同じ顔で、同じ存在で。 だけど、全く違う考えを持っていて。 それは幸にも不幸にも変わり。 僕にとってのこの生はきっと…… 09.不幸-end- ←→ back |