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07.同じ者の死





「……っ…」



――ガシャンッ



突然脱力感を感じ、手に持っていたカップを落とした。

割れて破片と化したカップを見下ろして、思う。


――ああ、アイツが死んだんだ


と。

激しく鼓動する心臓。

僅かに震える腕を無理矢理抑え付ける。


「…アンタは、最後まで甘ちゃんだったんだね……」


力の入らない足、壁に寄り掛かる形でその場に蹲る。


最後に見たのは、アンタの涙。

僕の為に流した涙。

それが、今も気になっていて。

何故、なんて。

あの時死んでいれば、気にもならなかった事なのに。

だけど今…僕の頬にも、涙が伝った。


「…なん、で……」


悲しいなんて、思うはずがないのに。

流れる涙を乱暴に拭う。

それでも止まる事無く流れ続けるそれは、僕にとって初めての涙だった。

これは、同情なのか。

それとも……


「アンタは、馬鹿だ…」


騙されていると、気付いていたはずなのに。

あんな女を、最後まで信じて。

裏切っているアイツを、心配して。


既に、涙を拭う事はしなかった。


「いいよ、勝手に泣け。」


これは、僕の意志ではない。

きっと、アイツの……。


「だけど、僕はアンタみたいにはならない。」


世界に復讐を。

この愚かしい存在を、認めて生きる事は出来ないから。





それでもやっぱり、アンタに自分を重ねる時が在ったんだ。





皮肉な事にアイツが死んだのも、ザレッホ火山だった。

アンタも、他のレプリカの元に行ったのだろうか。





07.同じ者の死-end-





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