6 06.孤独 一生外すことの許されないこの仮面。 光の中にいる為には、偽りの姿で在るしかない、この哀れな存在。 こんな世界にも、好きでいる訳ではないのに。 「シンク、明日の任務だ。」 ノックもせず部屋へと入って来たヴァン。 とっさの事で、仮面を付けていない僕。 「…不用心過ぎるな。」 ――キィッ 音を立てて閉まった扉に鍵を掛ける。 「…たまたま、だよ。」 「偶然でも、そのような偶然が在ってはならない。分かっているな?」 「…分かってる。『僕』の存在は知られてはいけない。」 「そうだ。…お前はシンク。『烈風のシンク』だ。」 自分だけの名を与えられた事に喜んだ時もあった。 イオンの影として生きなければいけないあのレプリカより、自分だけの名を与えられて生きる自分の方がまだマシではないか、と。 けれど、やはりそれは認められなくて。 常に隠された自分の顔。 たまに視界に入る自分の顔は、自分ではなく。 それは、導師のもので。 「…で、任務って?」 話題を戻しながら仮面を再び顔に当てる。 既に付ける事で落ち着く自分がいた。 「…導師の護衛だ。」 「……は?」 聞き間違いかと思い問い返すが、訂正する気のないらしいヴァンから真実だと悟る。 「何でだよ。僕とアイツの関係を考えれば、そんなのアンタが許可する訳ないだろ?」 「これは、導師直々の命だ。」 「……っ…」 乾いた空気が喉を通った。 何が何だか分からない。 気付かれたのか? 「…案ずるな。ただ、六神将の中でお前だけが唯一顔を合わせていないから、と言う理由らしい。」 「…え……」 「あのお人好しな導師は、全員に挨拶をしたいらしくてな。」 「………」 安心したのか、更に困惑しているのか。 僕は、上手く回らない頭を動かして答えた。 「……明日は外せない用事がある…そう、断っておいて。」 「シンク、だが……」 「分かってる、分かってるよ…でも、アイツとは会いたくないんだ……」 「…分かった。」 黙って部屋を出たヴァン。 扉の閉まる音を聞いてから、僕は呟いた。 「アンタは、光の中にいるから…。」 06.孤独-end- ←→ back |