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2.もし、僕達が不幸の代表だというならば





「…ひっく…っ…」


今日も彼女は泣いていた。

先日僕と会った、木の下で。

昼寝に最適のお気に入りの場所だったのに…あれ以来彼女は、何度も此処に来るようになってしまった。


「…はぁ…。」


お気に入りの場所が自分だけの物では無くなった所為か、泣いている彼女を前にしての困惑の所為か…恐らく、後者の意味を含めた溜め息をついた。

その声によって後ろに立つ僕に気付いたアリエッタ。


「…シン、ク…っ?」

「何。」

「シンク…シンク…っ!!」


突然僕に抱きついて来たアリエッタを受け止めきれずにそのまま後ろに倒れた。


「…っ…何な訳?」

「…シンク…どうしよう……」

「だから何。今度は何で泣いてる訳?」

「…ママが…っママが殺されちゃった…っ…ふぇ…」


そう言って再び大粒の涙を零し始めるアリエッタ。

困ったな…空っぽの僕に、慰める術なんて持っていない。


「アリエッタ…また独り…なっちゃ…っ…」


ああ、そうか。

彼女は実の母を失い、導師を失い…育ての親まで失ったのだ。

つくづく不幸の固まりだと思った、僕と同じで。


「…シンク…シンク……」

「何。」

「シンクも…居なくなっちゃうの…?」

「…は?」

「アリエッタの…大切な人…皆居なくなっちゃう…シンクも…?」


大切な人…初めて言われた言葉に戸惑った。

でも、初めて嬉しいとも感じた…。

押し倒された姿勢から、アリエッタの手を引いて腕の中に収める。

言葉が見付からないから、せめて気の済むまで泣けるよう…。



暫くすると安心したのか、彼女は眠ってしまった。


「たまにはこう言うのも…良いかな…。」


僕もそのまま、彼女の温かさに触れながら意識を手放した。



――もし、僕達が不幸の代表だというならば…

彼女の不幸も、僕が背負うから…

彼女に一筋の幸せを――。





2.もし、僕達が不幸の代表だというならば-end-





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