5 05.知らない世界 本で読んだ物と現実は、全く違った。 突然『師団長兼総参謀総長』なんて座に就くのだから、世間知らずなんかじゃいられない。 だから、写真や本で沢山頭に叩き込まれた。 無理、なんて泣き言を言う間もなく、毎日勉強。 僕も早く外の世界が見たくて、必死に勉強した。 ヴァンに戦えるよう武術も教わって。 そうして、初めて外に出た日。 外は、雪だった。 初めて見る本物の雪。 僕は仮面の下から、ずっとそれを眺めていた。 手に触れた瞬間、水になって溶けていく雪。 その儚い様子は、本当に美しかった。 本物の世界は、こんなにも綺麗なのだと。 それでも僕の居られないこんな世界。 滅びてしまえばいい。 『師団長兼総参謀総長』の座に就いてからの任務。 初めて行く所行く所で、僕は毎回一人の時間を作った。 そうして、初めて見るこの外の世界を、何度も感じた。 それは、嬉しくもあり、悲しくもあり。 何故自分は出来損ないなのだろうと、何度も自分の生を呪った。 普通ならば、この空も素直に綺麗だと、美しいと言えたのに。 影の世界しか知らなかった僕に、この美しい空は眩しくて。 美しさも、醜さも。 みんな、消してしまおうと思った。 05.知らない世界-end- ←→ back |