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04.烈風のシンク





ヴァンに与えられたのは、第五師団の師団長の座。

そして、参謀総長。

正直、始めからこんな立場に置かれるとは思わなかった。

だけどヴァンは


『お前の力も努力も、私が認めた物だ。』


そう言って、僕をその地位に立たせた。





こんな歳の僕が突然師団長となった事に、不満を持たない奴は当然の如く居ない。

僕もまだ人に命令をする器でも無かったから、その不満を抑える事は出来なかった。



そんなある日、雪山の任務で本隊と離れてしまい、一人の兵と孤立させられてしまった。

その兵は怪我を負っていて、意識はあっても自力で動く事は出来ない。


「…困ったね。僕は回復なんて出来ないし、道具も無い。」


魔物が襲うこの場所でこの兵を一人にするのは、見殺しにするも同然。

それでも、早く本隊と合流しなければ、今度は指揮を失った本隊が崩れてしまうだろう。


「…シンク様…、私は構いません……貴方だけなら、本隊と合流出来ます…」


兵は枯れるような声で、僕の考えを見抜いたように言った。


「…貴方は、一つの隊の責任を負っているのです…一つの命を気にしては…いけません…それにこのままでは、貴方までが危険に……」


確かに、段々と魔物は増える一方。

時間が経つにつれ、本隊と合流出来る確率も減る。

それでも…


「自分を犠牲にしてでも…それが忠誠?僕はそんな物いらないね。アイツらが僕の部下なら、アンタも僕の部下だ。全員、引きずってでも連れて帰るよ。」

「…しかし…っ…」

「これは命令。」


初めての命令なんて言葉。

兵は、泣きながら頷いていた。





その後、僕は譜術で出来る限りの火柱を立て、本隊に自分の位置を伝えた。

正直、ダメ元だったけど。

それでも、必死に僕達を探していたらしい本隊は、見付けてくれて。

既に力の残ってない僕と兵は、本隊に守られて本部へと戻った。





本部では、あの兵が

『兵を一人一人見て下さる』

だとか

『立派な優しい方』

だとか噂したらしく、団の士気は上がった。



僕がアイツを見捨てなかったのは、きっと…



――僕に似ていたから。





04.烈風のシンク-end-





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