3 03.仮面で隠したものは 「今日、七番目のレプリカが導師となった。」 「…そう。」 ヴァンの報告を聞いても、あまり驚かなかった。 昨日オリジナルが死んだのは知っていたから。 ただ、やっぱり自分は導師になれなかった。 所詮は出来損ないか。 無駄だと心の隅で分かっていたのに。 『もしかしたら』 なんて、柄にもなく可能性を信じて、ダアト式譜術も使えるようになった。 詠唱が無いダアト式譜術は導師にしか使えない。 劣化レプリカとは言え、それが出来るようになったのはヴァンに誉められた。 ただ、ダアト式譜術は身体の第七音素を大幅に消費する為、連続して使えばこの身体はもたない。 オリジナル達人間と違い、何も残る事なく消える。 だから、多分これを連続して使うのは、最期。 それがいつ来るものかは知らないけど、劣化レプリカはオリジナルより寿命も短い。 その前に、最期くらいは自分の意思で消えたいと思った。 「シンク…すまないが……」 「良いよ、分かってる。七番目が導師についた時から、僕は二度とこの顔を表に出す事は許されない。そうだろ?」 「………。」 「アンタは悪くない。そして、僕も。…悪いのは、この世界。そして預言…。」 「シンク…私と来い。預言を…第七音素を、共に消滅させよう。」 「…オリジナルが死んだ今、僕はアンタに従うよ。」 「…受け取れ。」 差し出された仮面。 一度それを強く握り締めると、僕は隠した。 顔を 自分を 存在を そして、ヴァンに全てを託した。 命を 運命を 希望を ヴァン。 アンタにとって、僕は捨て駒だろう? それでもアンタに託すのは、自分と同じ何かを感じたから。 第七音素を消す為にヴァンと手を組むのは、僕も利用しているのと同じだしね。 この仮面で隠したのは、顔だけじゃない。 03.仮面で隠したものは-end- ←→ back |