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03.仮面で隠したものは





「今日、七番目のレプリカが導師となった。」

「…そう。」


ヴァンの報告を聞いても、あまり驚かなかった。

昨日オリジナルが死んだのは知っていたから。

ただ、やっぱり自分は導師になれなかった。

所詮は出来損ないか。

無駄だと心の隅で分かっていたのに。


『もしかしたら』


なんて、柄にもなく可能性を信じて、ダアト式譜術も使えるようになった。

詠唱が無いダアト式譜術は導師にしか使えない。

劣化レプリカとは言え、それが出来るようになったのはヴァンに誉められた。

ただ、ダアト式譜術は身体の第七音素を大幅に消費する為、連続して使えばこの身体はもたない。

オリジナル達人間と違い、何も残る事なく消える。

だから、多分これを連続して使うのは、最期。

それがいつ来るものかは知らないけど、劣化レプリカはオリジナルより寿命も短い。

その前に、最期くらいは自分の意思で消えたいと思った。


「シンク…すまないが……」

「良いよ、分かってる。七番目が導師についた時から、僕は二度とこの顔を表に出す事は許されない。そうだろ?」

「………。」

「アンタは悪くない。そして、僕も。…悪いのは、この世界。そして預言…。」

「シンク…私と来い。預言を…第七音素を、共に消滅させよう。」

「…オリジナルが死んだ今、僕はアンタに従うよ。」

「…受け取れ。」


差し出された仮面。

一度それを強く握り締めると、僕は隠した。


顔を

自分を

存在を


そして、ヴァンに全てを託した。


命を

運命を

希望を


ヴァン。

アンタにとって、僕は捨て駒だろう?

それでもアンタに託すのは、自分と同じ何かを感じたから。

第七音素を消す為にヴァンと手を組むのは、僕も利用しているのと同じだしね。





この仮面で隠したのは、顔だけじゃない。





03.仮面で隠したものは-end-





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