2








02.劣化品





『出来損ない。』


『誰からも疎まれ、誰からも蔑まれる存在。』


『価値?そんな物無いよ。』



『お前は生きた人形だ。』





煩い、煩い、煩い。


嫌と言うほどに叩き込まれた現実は、行き場のない感情だけを僕に与えた。

怒り、悲しみ、憎しみ、虚しさ。


「良いかい?お前は僕の影なんだ。…その胸に刻まれた印は、その証。…逃げる事は、許さない。」


後から聞いた。

この印は、第七音素を増やすだけじゃない。

力を与える代わりに、導師に命を捧げる契約。

常に僕の命はアイツに握られている。

いつ訪れてもおかしくない死への恐怖。

アイツは、楽しそうに笑った。



「死が見える僕と、死が見えないお前。どっちの方が不幸なんだろうね?」



当然、見えない方が不幸だと思った。

全てを知る恐怖、僕には分からないから。


『お前の命は僕が預かるよ。』


『お前が勝手な事をしないように。』


『僕はいつでもお前を殺せるから。』


自由がない自分。

常に見張られている感覚。

この愚かしい生を呪った。

何度も、何度も。

そして行き場のなかった感情は、導師に向いた。


『レプリカ』


「煩い」


『レプリカ』


「煩い」


『レプリカ』


「ウルサイ」



誰の所為?

導師?



「導師はご病気で、もう長くはない。」



――導師が、死ぬ?





その時、初めて笑った。



『死ね』


『死ね』


『死ね』


『シネ』





そして、導師は死んだ。


――呪印は、消えなかった。



『お前だけ自由になんて、させない。』


『お前は、死ぬまで僕の影。』


『そう――…死ぬまで。』



頭に残る言葉。


一生、影の証。





そして、再び行き場を失った感情は、世界に向いた。



『こんな世界、滅びてしまえばいい。』





02.劣化品-end-





back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -