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07.見えない壁





今日もイオン様に会えなかった。

部屋の前に言っても、神官の人に追い返されちゃう。

なんで?

アリエッタ、何か悪い事したの?

初めてイオン様に拾われてから、こんなに長い間会えないのは初めてで。

不安が募る。

アリエッタ、嫌われちゃったのかな……。





今日もイオン様のお部屋に向かう。

でもね、今日はいつものアリエッタじゃないの。

あの見張りさんに見付からなければ良いんだよね?

だからお友達に協力して貰うんだ!!



――ガシャーンッ!!



教会内にガラスの割れる音が響き渡る。


「何だ!?何の音だっ!?」


教会中が慌ただしくなると、イオン様のお部屋前にいた見張りさんも下へ向かって行った。

これでイオン様に会える…!!


「イオン様…っ!!」


嬉しさのあまり、涙も浮かびながらドアを開けた。


「…はい?」


振り返ったのは、間違いなくイオン様だった。

数日会えなかっただけなのに、凄く懐かしくて。

すぐに抱きつきたかった。

だけど……


「…えっと…どなた…でしょうか…?」


突然困ったような表情でアリエッタに聞いてきた。


「…イオン様…?アリエッタの事…忘れちゃったの…?」


驚きのあまり、アリエッタは泣く事すら忘れていた。


「アリエッタ…?…あ……」


イオン様は何かに気付いたように目を見開くと、気まずそうに顔を俯かせてしまった。


「……イオン様、どうして…っ?アリエッタ、ずっと寂しかったのに…!!何で……っ」


混乱のあまり、自分が何を叫んでるのか分からなかった。

だけど、イオン様は1つとしてそれに答えてくれる事もなく。

アリエッタの声に気付いた神官が集まって来るだけだった。


「またこの娘かっ……窓を割った魔物もお前の差し金だろう……さぁ、さっさと出るんだ!!」

「やだぁ!!イオン様の側にいる!!ずっといるって約束したもん…っイオン様ぁ!!」


神官に無理矢理引っ張られる。

痛みと悲しさで涙が浮き上がる中、イオン様に手を伸ばした。

しかしその手は掴まれる事はなく。


黙って悲しそうに私を見るイオン様は、もうアリエッタの知ってるイオン様じゃないんだと、心とは裏腹に頭が理解してしまった。


知りたくなかった。





07.見えない壁-end-





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