5 05.寂しそうな貴方 最近、イオン様の様子が変、です。 …アリエッタに分かるのはそれだけ。 何が変なのか、どうして違和感を感じるのか…。 とにかく、イオン様はご病気になってから変。 「…アリエッタ、どうしたの?僕の顔に何か付いてる…?」 「え…あ…いえ…。」 「変なアリエッタ。」 …変なのはイオン様、です。 やっぱり何か…違う。 いつもなら、今の時点でアリエッタに対して『馬鹿』だとか『間抜け』だとか。 絶対に悪口が混じってた。 それなのに、最近は悪口の1つも言って貰えないの。 それに、アリエッタを見る度、何でか寂しそうな顔をするの。 …何で…? 「…アリエッタ…どうして泣きそうな顔してるの?また誰かに苛められた?話しなよ。」 …アリエッタは、言葉が上手くなくて、人と話すのも苦手。 だから良く、陰口とかを言われて、イオン様の部屋で泣くの。 そうするといつもイオン様は、 「気にする事はないよ。正面から言わないのは、内心アリエッタに怖じ気付いてるんだから。アリエッタはアリエッタ。他人と少し違っても、それがアリエッタの個性なんだよ。僕はそんなアリエッタが大好きなんだから。」 って笑顔で話してくれる。 だから最近は、陰口を言われても泣かなかった。 でもね、イオン様の寂しそうな顔を見ると、何故か悲しくなるの。 イオン様はアリエッタを助けてくれるけど、アリエッタはイオン様を助けられないの? 「アリエッタ……?」 ベッドに座りながら優しく問掛けてくるイオン様。 違う、違う。 心配されるべきなのは、アリエッタじゃないのに。 イオン様なのに。 「違う……」 一気に全てを聞いてしまいたいけど、本能がそれを拒絶する。 『聞いてはいけない』 と。 「イオン様……」 何も言えないアリエッタは、イオン様の膝に頭を預けます。 こうしてるだけで、不安が全て無くなる気がして。 「イオン様。」 「…ん?」 「弱虫で、ごめんなさい…。」 それでもね…… 「ずっとイオン様の側に居る、です。」 アリエッタに出来る事もあるはずだから。 せめてイオン様が寂しくないよう。 側に居るからね。 05.寂しそうな貴方-end- ←→ back |