17 ―あなたの幸せを願う― 体を水に漂わせながら、波に飲まれていく体。 シャル、僕達はこれで最期…スタン達は無事に脱出しただろう… 悔いはないさ。 《マリアンは…?》 マリアン…? 嗚呼…心配だ…。 けど奴らなら…きっと助けるさ。 僕は裏切った人間。あの時、スタン達に連絡をしていればもしかしたら…この手でマリアンを救えただろうな。 《坊ちゃん、さっき悔いはないって言ってたじゃないですか》 笑うなシャル。今思えばって話なだけだ。 マリアン…僕は思う。 これは恋なのか…なんなのか。 最初にマリアンを見た時、僕が記憶にあるのは4歳くらいか…その時僕はマリアンが母親に見えた。 屋敷にあったたった一枚の肖像画。母・クリスの肖像画。 その黒い髪も顔も、マリアンと似ていて…いや、正確にはマリアンが似ていたんだな。 僕は最初、母の生まれ変わりだと思った。 シャル…僕が母とは違う…別の感情になっていたのは何時だった? 《坊ちゃんは解りにくいですからねぇ…反抗期になった11歳頃じゃないですか?》 反抗期か…そんな時期もあったな。 僕は一度、マリアンの作ったプリンを投げ捨てた事がある。 その時はむしゃくしゃしてな。ヒューゴによく罵声に似た言葉を使っていたっけ。 あの時のマリアンの顔が、悲しそうだったのを覚えてる。 《それから反抗期が終わったんでしたね》 …マリアンが悲しい顔してたからな…。 その後プリンのこと謝ったら、もう一つくれたっけ。 あの時のが1番美味しかったな。 《食べ物の感想述べてどうするんです?》 ちょっと思い出しただけだ。お前はいちいち突っ込まないと気が済まんのか? まぁいい。 とにかく…あのころから僕は、マリアンを好きになっていた。 でもシャル…僕はどっちの好きだと思う? 母親がわりとして"好き"か 一人の女性として"好き"か。 《それはボクが決めるのではなくて坊ちゃんが決めることです》 ふ…聞いた僕が間違いだったか。 確かに…この気持ちは確かに"好き"だ。 ただ…僕にとって"好き"という感情を持った人はマリアンただ一人だけ。 比べようがないだろう。 だから…これは双方の"好き"で…いいか。 《欲張りですね》 この期に及んで…欲張りはないだろう… 《坊ちゃん…》 マリアン…好きだ… だから…生きて……―― _ ←→ back |