15 ―独りになりたくても、君だけは傍にいてほしい― 暗い暗い洞窟の中、今まさにこの洞窟を飲み込もうとしている海水は壁にもたれ掛かった僕の膝まで来ていた。 スタン達はもうとっくに洞窟を出ていて、この場に居るのは僕とシャルだけ。まぁ、一人のようなものだ。 そんな中、僕はただただぼんやりと命が尽きるのを待っている。 『坊ちゃん…。本当にこれで良かったんですか…?』 そのシャルの問いかけに思わず嘲笑が漏れた。 「今更だ」 一言そう言えば、もうシャルは何も言わなかった。 そう、今更なんだ。ここまでしてもう後悔なんて出来ないし、する気もない。 自分の意思で世界を裏切り、スタン達を裏切り。 懺悔したくらいでは許されない、それ程の罪を犯した。 今、僕が独りなのはきっとその罪への罰。 こんなものは覚悟していたことだ。これは僕が自分で選んだ結果の事で苦しみなど無い。 むしろ今誰かが傍に居れば逆に苦しいだろう。 でも……あえて望む物があるとするなら、それは。 「(マリアン……)」 彼女の笑顔。 彼女の声。 彼女の隣。 それだけが、欲しい。 …叶うことはないけれど。例え今此処にマリアンが居たとしても、多分彼女は笑ってくれない。声はきっと哀れみに満ちた物で、隣に立つなどそれこそ罪だ。 でも、それでも。 最期に、彼女の姿がみたかった。 独りになりたくても、君だけは傍にいてほしい。 (そんな願いも虚しく、海水は僕を埋めていく。まるで幸せを思い描くことさえ許さぬと言うように。) _ ←→ back |