1 ―孤独を恐れて― 虚無の自身から、浮かぶそれがなんのか 僕はわからない。 「お気楽なやつ………」 陽の眩しさがうざったいくらい晴れた日。 七番目は導師守護役と中庭に出ていた。 何を話しているのかは聞こえないが、それは楽しそうに。 “イオン”に話しかけているのは豚大詠師(ひどいょ)に利用されているアニス・タトリン。 「馬鹿みたい」 “イオン”。 お前知らないだろ? お前が唯一心許している導師守護役ですら、“代用品”の監視役なんだよ。 そして、アニスは七番目がレプリカだってことを知らない。 既に死んでいる被験者の偽物。 お互いに騙し合っている以上、七番目は哀れな道化。 “被験者の代用品”“導師”のレプリカという立場から逃げ出すことすらできない。 孤独な、ピエロ。 でも、それなのに楽しそうに笑うお前が憎いよ、七番目。 同じレプリカなのに、代用品になれなかった僕は、導師守護役のようなやつなんていない。 僕もまた、哀れなピエロ。 否、ピエロですらない。 「………ほんとに馬鹿馬鹿しい」 虚しくなって、目を閉じて俯く。窓から注がれる光の帯を遮るように、顔の上に本を被せた。 結局、笑い声が耳障りで 窓を閉じた。 《孤独を恐れて》 (自ら人を払い除けている、 歪であろうと仲間がいることを知らない 僕もまた孤独) _ ←→ back |