5 「まぁ、あの程度の魔物なら…って、ルーク?」 ――ガッ 俺はシートに乗っていた自分の剣を掴み、そのまま海まで全力疾走。 「ルーク!?危険です…!!」 後ろから聞こえる声なんて耳に入らなかった。 浮かんで来ないティアが心配で。 「くそ……っ」 水圧で動きの鈍くなる足を出来る限り速く動かし、ティアの元へ向かった。 ――ティアside―― 「……んぐっ……(何、コレ…魔物!?)」 私は足に絡み付いたイカの足を振り払おうとしていたが、魔物である以上、人の手で軽く外せる力ではない。 強く引っ張られるようにして、自分の身体がどんどん深く沈んで行くのが分かる。 「(…でも、この程度なら…譜術で……)」 倒せる、そう思い、魔物に向かって手を向けたその時。 ――ザバンッ! 頭上から音がする。 驚いて顔を上げると、ルークが剣を振り下ろしていた。 そしてそのまま私の足に巻き付いたイカの足を斬ると同時に、水圧で重いであろう剣を振り上げ大王イカに挿した。 ゴボッと水音を立てて藻掻くイカは、逃げるようにその場から去って行く。 振り向いたルークは私を見て、安心したように表情を緩めたのだが。 「(ルーク!?)」 どんどん離れていく私と彼の距離。 当然だろう、剣を持ったまま水の中に入るなど、重石を持って入ったようなものなのだから。 「(ルーク!…もう、何で剣を離さないの……!!)」 足の付かない水中で殆どパニックになっている様子のルーク。 当然、水上に上がろうとバタバタと藻掻いているだけ。 剣を離す様子などない。 私はルークの元へ急ぎ泳ぐが、ゴボッと音がすると同時に、ルークの口から空気が漏れた。 息が限界だったのだろう。 そのまま意識を失ったルークは剣を落とし、私はルークを掴まえ、抱えるように水上まで泳いだ。 _ ←→ back |