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「っだぁぁ!疲れた!」


「そう?まだ少ししか泳いでないのに……」


「この波うぜー!プールと違って静かに浮いてられねー……」



ブツブツと文句を言いながら、ティアをチラリと見る。


俺は海が初めてだから、水の中で足がつかない事なんて体験した事がない。


その所為で、いきなり深い所に行くのは危険だと判断し、俺達はギリギリ顔が出る程度の辺りで泳いでいた。


でもティアは俺に合わせてくれているだけで、多分本当はもっと沖まで行きたいのだろう。



「あーあ、俺少し休憩。一旦ジェイドの所戻るわ。」


「え?あ、じゃあ私も……」


「い、いい!…ティアは泳いでろよ。俺だって直ぐ戻るから、さ。」


「……そう?」



だから、わざと俺は戻る事にした。


本当はもっとティアと居たかったけど、俺の我が儘に付き合わせている訳にもいかないから。



「…もう少し、一緒に泳ぎたかったのに……」



後ろで聞こえた声には気付かず、俺は波に流されないようゆっくりと海から上がった。





浜ではジェイドが、ビーチパラソルの下でビニールチェアに横になっていた。



「ただいま、ジェイド。…随分と一人だけ、リゾート気分だな……」


「お帰りなさい。いえー、一応リゾートキングの称号は持っていますからね。それに相応しいだけの立場で居なくては……」


「あー、分かった、分かったよ。」


「……それより、ルーク。どうして急に戻って来たんですか?」


「ちょっと、疲れただけだよ。」


「…そうですか、ティアに気を遣って……」



コイツは人の話を聞いているのだろうか。


今のは明らかに会話が成り立っていない。


勝手に俺の本心と会話しないで欲しい。



「貴方が人を気遣えるようになった事は誉めるべき事…ですが。」


「…ですが?」


「乙女心が分かっていませんねぇ…。」


「…何言ってんだ?」


「まぁ、良いでしょう。お子さまにはまだ難しい事です。」


「何かむかつくぞ、おい。」


「ところで、ルーク。」


「んだよ。」


「ティア、何をしているんでしょうね?」


「は?」



さっきまで俺が居た場所には、ティア一人の姿ではなく。


ティアの背後には、大王イカと呼ばれる特大サイズの魔物が。



「ティア!?危……」



俺が叫ぶ前に、ティアは大王イカと共にその姿を海の中へと消してしまった。



「ティアー!!」





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