4 「っだぁぁ!疲れた!」 「そう?まだ少ししか泳いでないのに……」 「この波うぜー!プールと違って静かに浮いてられねー……」 ブツブツと文句を言いながら、ティアをチラリと見る。 俺は海が初めてだから、水の中で足がつかない事なんて体験した事がない。 その所為で、いきなり深い所に行くのは危険だと判断し、俺達はギリギリ顔が出る程度の辺りで泳いでいた。 でもティアは俺に合わせてくれているだけで、多分本当はもっと沖まで行きたいのだろう。 「あーあ、俺少し休憩。一旦ジェイドの所戻るわ。」 「え?あ、じゃあ私も……」 「い、いい!…ティアは泳いでろよ。俺だって直ぐ戻るから、さ。」 「……そう?」 だから、わざと俺は戻る事にした。 本当はもっとティアと居たかったけど、俺の我が儘に付き合わせている訳にもいかないから。 「…もう少し、一緒に泳ぎたかったのに……」 後ろで聞こえた声には気付かず、俺は波に流されないようゆっくりと海から上がった。 浜ではジェイドが、ビーチパラソルの下でビニールチェアに横になっていた。 「ただいま、ジェイド。…随分と一人だけ、リゾート気分だな……」 「お帰りなさい。いえー、一応リゾートキングの称号は持っていますからね。それに相応しいだけの立場で居なくては……」 「あー、分かった、分かったよ。」 「……それより、ルーク。どうして急に戻って来たんですか?」 「ちょっと、疲れただけだよ。」 「…そうですか、ティアに気を遣って……」 コイツは人の話を聞いているのだろうか。 今のは明らかに会話が成り立っていない。 勝手に俺の本心と会話しないで欲しい。 「貴方が人を気遣えるようになった事は誉めるべき事…ですが。」 「…ですが?」 「乙女心が分かっていませんねぇ…。」 「…何言ってんだ?」 「まぁ、良いでしょう。お子さまにはまだ難しい事です。」 「何かむかつくぞ、おい。」 「ところで、ルーク。」 「んだよ。」 「ティア、何をしているんでしょうね?」 「は?」 さっきまで俺が居た場所には、ティア一人の姿ではなく。 ティアの背後には、大王イカと呼ばれる特大サイズの魔物が。 「ティア!?危……」 俺が叫ぶ前に、ティアは大王イカと共にその姿を海の中へと消してしまった。 「ティアー!!」 _ ←→ back |