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「海だー!」



海を初めて見たのは、ティアと共に超振動で飛ばされた時。


海で泳ぐ、と言う行為は知っていたものの、経験はなかった。


船の上から見下ろす事は出来ても、海の中にいる事はなかった。


ただ、潮の香りがするのを感じるだけ。


それが、今は目の前一面に広がる海の前。


俺達一行は、水着姿で立っていた。



「宜しいのでしょうか…こんな大変な時に……」


「ナタリアは気にしすぎだよ〜!折角大佐がああ言ってくれたんだしぃ。楽しもうよ!」


「あ!走っては危ないですわ、アニス!」



シートの上からそのままナタリアの手を引いて走り出したアニス。


ナタリアは躊躇いを見せているものの、引かれるまま海へ行けば、直ぐ楽しそうな声が聞こえて来た。



「さーてっと。俺達も行くかー。」


「おう!行こうぜ、ティア!」


「え、ええ…でも大佐、本当に宜しいのですか?」


「一日くらい、構わないでしょう。私達だって人間です。ぶっ通し仕事をしていたら、身体が保ちません。特に私のような老体には……」


「なーに言ってんだよ!ほら、ジェイドも行こうぜ?」


「いえいえ、私は結構です。若い人達だけで、どうぞ楽しんで来て下さい。」


「入らねぇのかよ、つまんねーな。ほら、ティア!行くぞ!」


「え、ええ……」



歩き出したティアを確認して、俺もシートの上から降りて走り出……そうと思ったのだが。



「あっちぃぃ!!」



俺はひっくり返るようにして、シートの上に尻餅をついた。



「ルーク!?」


「な、何だよこの砂!滅茶苦茶熱いぞ!?」


「ああ…ルークは海、初めてだもんな。ずっと太陽に照り付けられた砂は、かなり熱いんだよ。まぁ、海から出た後は全然感じないけどな。」


「もう、ルーク。驚かせないで。」



ほっと胸をなで下ろした様子のティアは、俺に手を差し伸べて来る。


何となく気恥ずかしくて、でもそれを無視する訳にもいかなくて。


目を逸らしながら『ありがとう』と呟いた。





「ルーク、お前…海でもタオラーか?」


「んだよ、悪いかよ。お前だって海のサルじゃねぇか。」


「この方が、動きやすいだろ?」


「そういやティア、その水着ってこの前のホテルで借りた奴…だよな?」


「ええ、そうよ。暫く貸して頂いているの。」



借り物でも綺麗に着こなすティアは、スタイルが良いのだと改めて実感する。


泳ぐのに邪魔にならないよう結び上げられた髪が、首筋に張り付くのが少し色っぽく感じられ……



「って、何考えてんだ俺……!」


「ルーク?どうしたの?」


「な、何でもねぇよ!」



考えを振り払うように首を大きく横に振った。





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