2 「海だー!」 海を初めて見たのは、ティアと共に超振動で飛ばされた時。 海で泳ぐ、と言う行為は知っていたものの、経験はなかった。 船の上から見下ろす事は出来ても、海の中にいる事はなかった。 ただ、潮の香りがするのを感じるだけ。 それが、今は目の前一面に広がる海の前。 俺達一行は、水着姿で立っていた。 「宜しいのでしょうか…こんな大変な時に……」 「ナタリアは気にしすぎだよ〜!折角大佐がああ言ってくれたんだしぃ。楽しもうよ!」 「あ!走っては危ないですわ、アニス!」 シートの上からそのままナタリアの手を引いて走り出したアニス。 ナタリアは躊躇いを見せているものの、引かれるまま海へ行けば、直ぐ楽しそうな声が聞こえて来た。 「さーてっと。俺達も行くかー。」 「おう!行こうぜ、ティア!」 「え、ええ…でも大佐、本当に宜しいのですか?」 「一日くらい、構わないでしょう。私達だって人間です。ぶっ通し仕事をしていたら、身体が保ちません。特に私のような老体には……」 「なーに言ってんだよ!ほら、ジェイドも行こうぜ?」 「いえいえ、私は結構です。若い人達だけで、どうぞ楽しんで来て下さい。」 「入らねぇのかよ、つまんねーな。ほら、ティア!行くぞ!」 「え、ええ……」 歩き出したティアを確認して、俺もシートの上から降りて走り出……そうと思ったのだが。 「あっちぃぃ!!」 俺はひっくり返るようにして、シートの上に尻餅をついた。 「ルーク!?」 「な、何だよこの砂!滅茶苦茶熱いぞ!?」 「ああ…ルークは海、初めてだもんな。ずっと太陽に照り付けられた砂は、かなり熱いんだよ。まぁ、海から出た後は全然感じないけどな。」 「もう、ルーク。驚かせないで。」 ほっと胸をなで下ろした様子のティアは、俺に手を差し伸べて来る。 何となく気恥ずかしくて、でもそれを無視する訳にもいかなくて。 目を逸らしながら『ありがとう』と呟いた。 「ルーク、お前…海でもタオラーか?」 「んだよ、悪いかよ。お前だって海のサルじゃねぇか。」 「この方が、動きやすいだろ?」 「そういやティア、その水着ってこの前のホテルで借りた奴…だよな?」 「ええ、そうよ。暫く貸して頂いているの。」 借り物でも綺麗に着こなすティアは、スタイルが良いのだと改めて実感する。 泳ぐのに邪魔にならないよう結び上げられた髪が、首筋に張り付くのが少し色っぽく感じられ…… 「って、何考えてんだ俺……!」 「ルーク?どうしたの?」 「な、何でもねぇよ!」 考えを振り払うように首を大きく横に振った。 _ ←→ back |