5 いつだって、周りを騙し続けている罪悪感に襲われていて。 偽物の自分に気付いたら、みんな離れてしまうのではないかと思っていて。 それでも、いつも隣にいた少女は、笑い掛けて来てくれた。 安心出来た。 それだけで、嬉しかった。 だから、あの子が苦しむ時は自分が役に立とうと。 あの子が泣いている時は、自分が笑わせてあげようと。 そう、思っていて。 『アニス……』 目の前で涙を瞳一杯に溢れさせる少女。 触れる事の出来ない手を伸ばして 『僕の為に、笑って下さい』 それが届いたのかは分からないけれど。 笑ってくれていたらいいな。 柔らかな風は、そのまま通りすぎ、丘の上へ流れていった。 もう一度瞬きをした時には、少女の前には石だけが残されていて。 少女は、乱暴に自分の瞳を服で拭う。 すくっと立ち上がると、高く高く続く空を見上げて そして、笑った。 それは、許されたいからではなく。 彼の為に。 少女は、隣に並ぶ石にも花を添える。 「…あんたが居なかったら、イオン様と出逢えなかったの。だから今は、感謝してるよ。」 そうして最後に、反対側の端にある石にも残りの花を添え 「…あんたも…最後まで、空っぽなんて言ってたけど…あたし、泣いたから。この女泣かせ、ばーか。」 少女はくるっと後ろを向き、ダアトを見下ろす。 そしてニッと笑った。 「さて、帰りますか〜」 大きく体を伸ばした少女は元来た道を戻って行く。 そして、いつもの日常へと返って行く。 最後に振り向くと、笑顔を見せて 「イオン様、また明日!」 _ ←→ back |