7 7.幼獣との親交の深め方 「あのね、今日お友達と…」 「…へぇ。」 「…そう言えばイオン様がね…」 「…そう。」 「その後イオン様がね…」 「……」 「それでイオン様が…シンク、聞いてる?」 「全く。」 「…っ酷い、です!!アリエッタが話してるの…ちゃんと聞いて!!」 「酷いのはどっちさ。」 「え…?」 「アンタさぁ…二言目にはイオン様イオン様、煩いんだよ!!はっ…あんな導師の何が良いんだか。」 「イオン様の悪口言わないで!!」 「…ああ、嫌がらせ?僕が導師の事嫌いなの知ってて、わざと?」 「ふぇ…っシンクの馬鹿ぁ!!」 バタバタと僕の前を走り去るアリエッタ。 またやってしまった。 …嬉しそうに導師の話をするアイツなんて見たくなかったから。 「…はぁ…。」 いつもならあの木陰に行ってアリエッタと話す時間。 いつの間にかそれが当たり前になっていた。 でも今の僕はそんな気分じゃない…だから部屋へ戻る事にした。 「イオン様…ね。」 分かってた。 アイツだって好きで僕が嫌ってる奴の話をしている訳ではない事。 唯、話題が無いから。 アイツの話題なんて、お友達と導師の事しかないのに…僕と話す為必死に話題を探して、結果的には導師の話が出る。 悪気は全くないんだ。 それでも、何か悔しくて… ――…コンコンッ 「……っ」 突然のノックに驚くが、立ち上がって扉を開けた。 「…アリエッタ?」 扉を開けた先には、ボロボロと涙を流したアリエッタ。 「…うっ…シンクぅ〜!!」 顔を上げずに僕の服を握り締めた。 「どうしたのさ。」 目線を合わせて屈んでやる。 「シンク…アリエッタの事…嫌いになった?」 「は?」 「…だって…いつもの所に来なかったぁ…っ!!」 「いつもって…約束してる訳じゃ…」 「やだぁ!!」 「やだって…」 泣き叫ぶ相手を静めようと頭を撫でてやる。 「御免…ちょっと用事で…」 取り敢えずその場凌ぎだが。 「だからアリエッタが嫌いになった訳じゃないよ…明日はちゃんと行くから。」 「…うん!!」 嬉しそうに笑って僕に抱きつくアリエッタ。 こんな会話でも、僕にとっては十分なんだけどね。 7.幼獣との親交の深め方-end- ←→ back |