1 それは それは 未来へと 『君と二人 果てない明日を』 そよそよと、頬を撫でる風が心地よい秋の昼下がり。シンクは中庭の木の根本で、何をするわけでもなくただぼーっと微睡んでいた。 秋独特の少しひやりとした冷たい風。夏の熱さが残す陽の光。 それが余りにも心地よくて、ああもうこのまま寝てしまおうかとシンクが瞳を閉じた──時だった。 「シンク」 後ろの方から高くて澄んだ、聞き慣れた声が掛けられる。振り返ってみると、そこには淡く微笑む愛しい人の姿。 「名無し」 名前を呼ぶと、名無しは嬉しそうに笑みを深め隣に腰掛けてきた。 「珍しいね。シンクがこんな時間にこんなところに居るなんて」 「仕事が一段落したからね。それに、珍しいのはお互い様、だろ?」 「私はシンクがここに居たから」 言って、名無しは再びニコリと笑う。 「空…綺麗だねぇ……」 「……そうだね…」 全ての闘いが終わり、汚れることの無くなった空。 そう、あれから二年。世界は元の平和を取り戻しつつあった。 「明日はシェリダンだっけ?」 「うん。アイツもあまり行かせたくないみたいだったけど、仕方ないよ。それが『償い』だから」 平和を取り戻した世界。その世界に生き残った、自分達。 あの闘いが残した傷痕は大きく、人々は皆口々に言うのだ。 『家族を返せ、この化け物め』──と。 特に民のほとんどが惨殺されたシェリダンは反発が強く、以前行った時には殺そうと刃を握る者すらいた。けれど、それも仕方のないこと。 そうされて当たり前のことを、自分達は今まで行ってきたのだから。 _ → back |