マルシベールは、いつも私をからかう。 私は、馬鹿にされがちなハッフルパフだけど純血の血筋に生まれたのだからからかわれる要因なんてないはずなのに。 合同授業だってハッフルパフはレイブンクローとで、スリザリンと一緒になったことなんてない。 接点は、皆無なのに。 「よお、ナマエ」 「ま、また貴方なの」 最悪だ。 よりによって1人の時に遭遇してしまった。 今日は何を言われるんだろう。 友達はみんな、マルシベールには気を付けろって言う。 そりゃあ闇の魔術を学校で使っているのも知ってるし例のあの人に心酔してるのも知ってる。 マグル生まれが大嫌いで顔を合わせる度に酷い言葉を投げつけているのだって。 酷い人だと思う。 「相変わらずブサイクだな」 「放っておいてよ!!」 でも、最近気づいたのは私をからかう時とマグル生まれの子たちに嫌味を言うときの表情が全然違うってこと。 すごく、嬉しそうに笑うのだ。 「はは、」 「何よ?」 「別に…足短いなって思っただけ」 「腹立つわね!!」 ほら、また。 スリザリンの人たちといる時みたいに何かを企むような悪どい笑みじゃない。 マグル生まれの子を馬鹿にしてる時の嘲笑いでもない。 年相応の、笑顔を私に見せるのだ。 「…マルシベール」 「何」 「あんた、そうやって笑った方がいいんじゃない」 驚いたように目を見開く彼に、私も驚いた。 笑う以外に、そういえばマルシベールは表情をあまり変えなかった。 「ほぉ、気づいてたワケ?」 「?…まぁ、そうね」 「ふぅん…なら、話は早いな」 「一体全体何の話をしてるのよ」 突然緑色のローブを翻し、意味深な笑みを私に向けてマルシベールは去っていった。 その笑みの意味を、私は次の日の朝食の時間に知ることになる。 「…ふくろう便?」 私の家が飼っているふくろうがポトリと落とした封筒に入っていたのは、 婚約者が決まったという内容だった。 「!?!?」 相手の名前を見て思わずカボチャジュースを吹き出しそうになったが、何とか抑える。 遠く離れたスリザリンのテーブルを睨み付けると、マルシベールと目があった。 よ ろ し く 口パクでそう伝え、ニヤリと笑ったマルシベールを殴りたい気持ちでいっぱいになった。 (突然決まった婚約者) (嫌な気持ちにならないのは、) どうして? |