▼ にょきにょき 母さんの言うことがどうにも納得いかなくて家を飛び出す。昔、そんなことが何回かあった。母さんも知らない――自分だけの場所にもぐり込んで、膝をかかえて……そうしているうちに、空には闇がひたひたと迫り、空には星がひとつ、ふたつと輝きだす。ちかちかと瞬くほしあかりと、空腹を訴える自分の身体に、かーっと熱くなっていた思考は次第に冷えてつめたくなっていった。……どうしよう。勢いで、出てきちゃったけど………。さっきまでとは違う、こころぼそい気持ちで僕は膝をぎゅうっとかかえ直す。 そんな時にいつも。僕をみつけてくれる奴がいた。 「――こんなとこにいた」 おさななじみのグリーン。かれはわずかに息を弾ませていて、僕のことをそうやって走って探してくれたんだと思うと、どうしてか胸の奥がきゅう、とあまく締めつけられた。 「もう帰ろうぜ。おばさん心配してた」 すいと差し伸べられるてのひら。腕を伸ばしてそのてを握る。ほんのり汗ばんだそのては、いつだってこころの底から安心できるやさしい温度をしていた。 「ぴぃか?」 びゅうびゅうと吹きすさぶ、霰混じりの風が頬を叩く。すりすりと身を寄せる相棒に応えてやりながら、口許にふ、と浮かぶのは自嘲の笑みだった。 (――馬鹿だな、) 自分は未だに待っているのだろうな。どこか他人事のようにそう、思う。こんなに寒さの厳しい山の中にひとりで篭って、連絡のひとつも寄こさないのはこちらの方なのに。世界でただひとり、グリーンが自分をみつけて――ここから連れ出してくれることをこころのどこかで期待しているのだ。 (グリーン、いまどうしてるのかな。元気かな。――ほんのちょっとでも、僕にあいたいって思ってくれてるといいのに) あいたい、そう思うのはもう何度目のことだろう?かれのことを脳裏に思い描きながら目を閉じる。 ざく、と雪を踏む音が背中からしたのはそんなときだった。 (……挑戦者か) けれどはあ、と息をついて振り返ったその先には。焦がれ続けたかれが立っていた。 「グ、リーン……」 「ぴっか、ちゅ!」 肩先からピカチュウが飛び下りて、グリーンの元へと駆けていく。足元で請うように見上げるピカチュウに、グリーンは顔をほころばせた。 「ひっさしぶりだなーピカチュウ!元気だったか?」 「ぴっか!」 「そっか。それにしてもおまえの主人はなんていうかまあ、相変わらず酔狂だなー」 こんなとこにいたなんてな。そうつぶやいて、グリーンがこちらを見る。意志の強さを窺わせる瞳が、あのころと同じようにまっすぐ僕を射抜いた。 「…"こんなとこ"まで、探しに来てくれたんだ」 「…しょうがねーじゃん。おばさん心配してんだよ。――だから帰ろうぜ」 「――うん」 頷くと、ピカチュウを抱いたままグリーンがこちらにてを差し出した。ゆびさきが触れ合った瞬間、ぱちりとグリーンが瞬く。 「……どうかした?」 「いや、……なんか、前にもこんなことがあったような気がして…」 なんちて!← なんか妄想はずっとしてたけど←、文章書くのひさしぶりだなー…なんか変な感じ!もっときゅるんきゅるんな話になるはずだったのにな…。あれ???(笑) 無自覚赤→緑でした! |