小話 | ナノ


 



「クラウスさんも気を付けて。」
そう言って離れて行く部下の背を見送り、クラウスは傍らの背景と酷くミスマッチなケースを背負って反対方向へと歩き出した。


クラウスは打ち合わせ通りの位置でケースを開けた。
一挺の銃。ケースから取りだし持ち運びのため分離しておいたショルダーストックと光学スコープを取り付け、二脚を展開する。地面に伏せ銃を川岸に向ける。スコープを覗き、トリガーに人差し指を掛けた。目標はまだ見えない。
通信を開く。
「ルディは?」
「作戦通り。…接触した。」
全神経を右目と左手に集中させる。こちらからは、どうなっているのかは分からない。
防音も兼ねた耳あてから聞こえる無機質な声に耳を傾ける。
読み上げられる数値を頭の中で再構築していく。
今のところ然したる問題は起こっていない。
うちの猟犬は優秀なようだ。
猫形の亜人が森から飛び出してくる。レティクルいっぱいに秀麗な顔が映る。
トリガーを引く。肩を蹴られるようなリコイル。閃光。銃声。白煙。猫は瞬時に肉片と化した。
後一匹。
猫が飛び出した位置に銃口を向け続ける。
が、中々現れない。
「…何やってるんだ…?」
後10mも動かせば十分だと言うのに。舌打ちを一つ。
「牛と交戦中。」
絶妙なタイミングで返答が来たが聞こえたわけではないだろう。
「…戦い慣れてるな。」
ぼそりと呟かれた言葉。
銃を抱えて立ち上がる。
「ここからだと撃ちにくい。」
「はいはい、行ってら。」
茂みから飛びだし、銃を背負って川岸のぬかるみを進む。
赤い閃光を確認。何らかの魔法。
また舌打ちを一つ。
背後を取ることも可能だが貫通してしまい、牛を挟んで反対側にいるであろうルドルフも巻き込む。それを防ぐためには牛の側面から狙撃するしかない。剣などとは違い手加減は効かないのが銃だ。しかし、牛は見通しのよい川岸には踏み込まない。だが、さっきの魔法で正確な位置が解った。近くの木の股に銃を預ける。
「終わりだ。」
スコープの倍率を調整し、牛の頭をレティクルの中心に乗せた。トリガーを引く。微かな金属音とともに廃莢が完了。トリガーを引いてからルドルフの位置が解らないことに気づく。ぎりぎり当たっていないだろうが、嫌な汗が出る。
近づいてみると彼が呆然と座り込んでいた。
「立て。」
もう少しまともな物言いがないのかと自分で突っ込む。
大した怪我はないようだと思ったところで黒の手袋が破損しているのに気づく。
「手、見せろ。」
「はい?」
何故か疑問符を付けながらルドルフは手を出した。
思った程酷い火傷ではないが、油断は出来ない。
「レベル2くらいか?とにかく早く冷やさないと面倒なことになるぞ。」






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -