櫂ショタアイ01


!高校生櫂くん×ショタアイチきゅん





それはなんでもない、いつも通り、のはずだった。
櫂は三和が最近行きたがるカードショップへの誘いを断り、帰路についていた。
夕飯を何にするか、ぼんやりと見慣れた風景を眺めながら考えていたところでふと目をとめた。そこは櫂が小さな頃よく遊んでいた公園だった。晴れの日は家ではなく、ここでカードファイトをしていたのだ。
そんな思い出のある公園で、小さな存在が視界に飛び込んだ。何故だか聞かれると分からない。いつもだったら素通りして、気にもとめないのに。その小さな存在は、ひとりベンチに腰をかけ、ぽつんとうずくまっていた。
気付けば足はそちらへと向かっていて、脳は帰ると反論する反面、この子をどうにかしてあげようとらしくもないことを考えていた。


「…おい」
「…」


目の前に立ち止まり声を掛けた。が、反応はなく、櫂は仕方なく隣に腰を下ろした。すぐそばに現れた気配を感じたのか、子どもは少しだけぴくりと肩を震わせた。しかし、膝に顔を埋めたままなのは変わらなかった。それを見ると櫂はもう一度口を開くことにした。


「おい、聞こえているのか」
「……、…?」


そうすると、ようやく自分に話しかけられていたのに気付いたのか、先程とは違い大きく肩を震わせ、あげた顔はサファイアの瞳いっぱいに涙を溜めて、顔を真っ赤にして下唇を力いっぱいに噛んで涙がこぼれないよう堪えようとしていた。髪は肩まであり、毛先は癖っ毛なのかくるりと丸まっており、さらには頭のてっぺんには一本、ぴこんと跳ねた毛が風によってゆらゆらと揺れていた。見た目からは少女か少年かは分からなかったが、服装を見て少年だと判断できた。
少年は櫂を見るなり、思い出したように慌てて袖で涙を拭った。ごしごしと数回擦ったあと、改めて櫂に視線を送った。


「ぼく、ですか?」
「ああ、そうだが」
「えっ…と、ゆうかい、ですか?」


不安げに首をこてんと傾げた少年は縋るようにぎゅっとシャツの裾を掴んでいた。


「違う」
「じゃあぼくになんのようですか?」
「俯いてたからだ」
「え?」


疑問の色を混ぜた返しに櫂は溜め息を吐いて、鞄を開けた。おどおどしながら櫂の行動を見つめていた少年は、櫂が取り出した一枚のカードを目の前に差し出されて再び首を傾げることになった。


「これは?」
「やる」
「え………えっ!えっ!?」


時間をかけてゆっくりと櫂の言葉を咀嚼した少年はさらにおろおろした様子でカードと櫂を交互に見て視線を泳がせた。しかし櫂がカードを差し出したまま微動だにしないのを見て、そっとカードを手に取った。見慣れないのかきらきらとした眼差しでじっとカードを見つめている。


「ぶらすたー…ぶれーど…?」
「ああ。何があったかは知らんがそれを見て勇気出せ」
「…ありがとう、ございます…!」


そこで今まで泣きそうな顔しかしていなかった少年が初めて笑顔を見せた。それを見て、櫂は自分でも知らないうちに優しく微笑んでいた。







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