永久のクレオメ04
扉の前に来て、すう、と息を吸う。この扉を開けば、櫂様がいると思うと、どきどきと胸が高鳴る。意を決して扉をノックした。
「失礼します。お茶をお持ちしました。よろしいでしょうか」
「…構わない」
ガチャリ、と扉を開け部屋の中へ入る。緊張して台を押す手に力がこもる。落ち着け、と心の中で自分に言い聞かせながらお茶の準備をする。ふわりとハーブティーの香りが部屋中にただよる。
「いつもの奴とは違うだろう?それに見ない顔だ。新入りか?」
「えっ…あっはい。せ、先導アイチと申します。つい先日この屋敷に…」
櫂様はそうか、と呟いてまた机に向きなおった。
突然話しかけられたから驚いた。だけど少しだけでも会話出来たことが嬉しかった。4年間…ずっとこうして、再び話したかった。あのときと色々変わってしまったけれど、僕は僕、彼は彼なんだ。それは変わらない。
「…お前…何故泣いている…」
「…っ!えっ…?」
気がつくと僕は泣いていた。そんな僕を見た櫂様は怪訝そうな顔をしている。どうしよう、やってしまった。まさか櫂様の前で泣いてしまうなんて。
「…っ申し訳御座いません…っ!少々目にゴミが入ってしまって…!」
「…」
慌てて取り繕うと、櫂様は納得のいかない様子だったが、本当にそれだけです、と付け加えるとその後は何も言わずに黙って僕を見ていた。
部屋には静寂が訪れ、居た堪れなくなった僕は、櫂様の顔をなるべく見ないようにして淹れたばかりのハーブティーを机に置いて、逃げるようにしてそそくさと部屋から立ち去った。
(あぁ…気まずい…)