永久のクレオメ02


四年前のこと。森で遊んでいたら帰り道が分からなくなってわんわん泣いていたら、男の子が家まで送ってくれた。そのときはありがとうの一言しか言えなくて、後日改めてお礼に行こうとしたんだけど彼の家がどこか聞いてなかったことを思い出し、結局彼にお礼が言えなかった。
それから一年が経ったある日。彼が僕の住む村の近くの広大な土地を所有するお金持ちの息子だということが分かった。
またいつか会えるだろうと、そのときはきっと一緒に遊べるかもしれないと思っていた。だけど現実はそうじゃなかった。僕と彼は住む世界が違うんだって思い知らされてすごく悲しかった。なぜここまで悲しいのかは、その頃の自分には分からなかった。


だから、数カ月前にその家が召使いを募集したときは、絶対に働きたいと思った。彼にもう一度会うにはこの方法しかなかったから。
短い期間でたくさん勉強して、反対する妹と心配する母をなんとか説得し、そして一週間前、はれてこの家で働けるようになったのだ。







昔のことを思い出しながら、今日の仕事に取り掛かる。
僕はまだ新人だから、庭の花に水をやるくらいしか仕事がない。だけど僕はこの仕事に誇りを持ってる。彼は仕事に疲れたとき、よく庭を見にくると聞いた。つまり誰かがこの庭を整備しなきゃいけないわけだ。それが僕の役目だと思うとなんだかやる気が出てくる。これも櫂様が好きだという気持ちからなんだろうな、と実感した。

そう、僕は櫂様に一目惚れしていたんだ。気づいたのは数週間前。妹のエミが友達と恋話をしていたのを偶然聞いてしまったときに、この気持ちがそれにぴったり当てはまったのだ。最初はびっくりして、どきどきしたけど普通に受け入れられた。きっと僕は心のどこかで分かってたんだと思う。

そして、これが絶対に叶わない恋だとも。

身分違いで同姓同士。それに彼はきっと僕のことなど欠片も覚えていないだろう。だけど僕は彼の傍にいられるだけで、仕えられるだけで幸せなのだ。これからも、ずっと。


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