あいたくてたまらない
※芸能パロ。アイドル櫂くんのファンのアイチくん。
「櫂くん…今日もかっこいいなぁ…」
朝のニュース番組が流れているテレビを見てアイチはふわりと微笑んだ。
テレビに映っているのは最近人気上昇しているアイドル、櫂トシキだった。
アイチは前に櫂と会ったことがあった。それは櫂がまだそれ程売れていない時期で、元々芸能人にあまり興味がなかったアイチは当然知らなかった。
櫂とアイチが会ったのは幼少の頃。
その頃いじめられていたアイチは公園で一人汚れた顔や手足を洗っていた。
そんなときに声を掛けて勇気づけてくれたのが櫂だった。
それから二人は暫く遊んだりしていたのだけれど、程なくして櫂が引っ越してしまった為、長くは続かなかった。
櫂が引っ越して暫くが経ったある日、アイチがなんとなくテレビをつけると、アイドル紹介番組がやっていた。
そこで、アイチは櫂が芸能人だったという事を知ったのだ。
(あの時はほんとに吃驚したなぁ…櫂くん、何も言ってくれなかったんだもん)
昔の思い出を頭の隅に浮かべつつテレビに夢中になっていたアイチに、早く行かないと遅刻するわよ、とエミが叱ったことにより、アイチははたと我に返ると慌ただしく、口にしていた苺ジャムの乗った食パンを咀嚼した。
(櫂くん、会いたいなぁ。でももう数年前の事だし、お仕事忙しくて僕の事忘れちゃってるかもしれないしなぁ。あ、その前に僕、櫂くんの連絡先知らないんだ)
アイチは今更そんなことに気付いた自分に苦笑混じりに盛大に溜め息を吐いたあと、玄関先に向かいながら先程諦めたことを再び考えた。
(櫂くんに会いたいなぁ)
あいたくてたまらない
title:確かに恋だった