11:微糖
「剣城って珈琲、飲めるんだ?」
「あ、あぁ…」
唐突に言われた珈琲、飲めるんだ発言
今まで普通だと思い気にしていなかったが同世代で珈琲を好んで飲む奴なんていないんだと最近、知った
「大人ぁ…」
「…お前が子供すぎんだろ」
「えぇ-…そうかなぁ…
剣城が大人すぎるんだよぉ…」
ちびちびとココアを飲む天馬を見て間違いなく子供だと思う剣城
「飲んでれば慣れる…」
「俺は絶対、無理…大人になっても飲める気がしないよ」
「…なら砂糖入れて飲め」
「うーん、でもどうせなら剣城と同じ物を飲めるようになりたいかなぁ…なんて」
「ふぅん…」
何気に嬉しくなることを言ってくる松風に俺の調子は狂わされっぱなしでどうしたらいいのかわからなくなる
「ね、剣城」
「ん?」
「少し飲んでみたい」
「は?」
「珈琲、少し飲んでみたい!」
「……」
いきなりこいつは何を言い出すんだろうか?
まぁ、飲んでみたいと言うのなら飲ませてみよう
反応が楽しみだ、なんて思いカップを差し出した
「………ヴッ」
顔を歪めカップを置き急いでココアを流し込む松風を見て
予想通りすぎる反応に吹き出しそうになるのをぐっ、と耐えた
「ったく、飲めないのに飲みたいとかバカかお前は」
「うぅ-だってぇ…
あぁ、やっぱり無理だぁ…」
若干、落ち込んだ松風はすぅっカップを差し出してきた
俺の前に帰ってきた珈琲のカップを見つめるとあることに気付いた
…間接キス
そう頭の中で浮かんだ言葉で顔が赤くなるのがわかった
「剣城?顔赤いけど大丈夫?」
「え、あぁ…」
間接キスのことを松風に気付かれなくて紛らわすように珈琲を飲んだら何故か甘く感じた
甘い…?
まさか…な…
ブラックの苦い珈琲にわずかに混ざった甘いココア
微糖になってしまったのが目の前にいる愛しい恋人のせいなのかと思うと甘いものが苦手な俺だが嫌な気はしなかった―