14:指きり(南倉)
「ｴﾛみ…南沢さん」
「てめぇ､わざとだろ」
「なんのことですか？変な言い掛かりはやめてくれませんか？
ウザいんで」
「ほんっとうに可愛くないよなお前」
「男に可愛いなんて言われても嬉しくないですから別にいいです」
「なら女子からならいいのか？」
「そういう屁理屈を言うのやめてもらえますか？」
俺は恋人の倉間を本当に可愛くないと最近思い始めていた
どうして好きになったんだとか何がそんなにと周りには言われたが好きだから俺のものにしたし愛しあった…
だけど…今はなんで俺はコイツと…？
「…南沢さん？」
下から聞こえる倉間の声は
少しだけ不安そうな声だった
「ん、なに？」
「人の話､聞いてました？」
「あ…悪い､何だ？」
「だから来週、その遊びませんか？
春休みですし…」
少し照れながらそっぽを向き言ってくる倉間
あ、可愛い、と素直に思った
そうか､倉間のたまにみせるこんなところが可愛いくて好きで好きでたまらないんだと再確認した
「いいぜ､どこに行く？」「えっ、と…
南沢さんの家がいい…です」
弱々しく制服の裾を捕まれ上目遣いでこちらを見てくる倉間
どうしようめちゃくちゃ可愛いぞコイツ
「倉間」
「はい…？」
「指きり」
「え？」
「約束…だろ？」
「なんかガキっぽいんですけど…」
「いいだろ、たまにはほら」
半ば強制に小指を絡ませ指きりをした
「ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます
ゆびきっ…」
「南沢さん？」
「やっぱりゆびは切らない方がいいな」
「なんすかそれ…」
「じゃぁお前は俺の為に小指を切る勇気あんのか？」
そんなもんあるわけないだろという返事を待っていたのだが違う返事が返ってきた
「そんなもんあるに決まってるじゃないすか」
「…は？」
「だって俺､南沢さんのこと好きですもん
はい､ゆびきったぁ-」
「あ…そ､う」
ぷらーんとなった小指を見つめてなんだか俺はさっきまで考えていたことが馬鹿らしくなった
「倉間､」
「ん？」
「俺もお前になら小指切ってやってもいい」
「なんすかそれ…」
「愛してる」
「知ってます…」
そうだ俺は可愛くない倉間も可愛い倉間もどんな倉間でもどうしようもなく好き好きででたまらないんだ―