13:吐息(京天)
「つーるぎぃー」
「…どうした?」
「一緒に帰ろう?」
「それは構わないが兄さんの見舞いに行くがいいか?」
「うん!俺も行きたい!」
「ん、」
こうして二人で学校を出て一緒に帰る事が当たり前になりつつあることに幸せを感じていたがそれと同時に不安も感じていた
いつかアイツは、松風は俺の隣からいなくなってしまうのではないだろうか…と
ぎゅうっ
「?」
右手が温かくて柔らかなナニかに包まれ視線を移動させると松風に握られていた
「…珍しいな」
「だって…」
「だって?」
「なんだか剣城が寂しそうな顔してたから…」
本当に松風は変なところで鋭いから焦る
そんなことねぇよ、と返しても嘘だ!と言い返してくる松風はどこまでも自分より他人を思いやる奴なのだ
そんな彼を俺は愛してやまない
「はぁ…」
「あ…ごめ…」
「何で謝るんだよ」
「だって…」
「あぁ、溜め息じゃないから安心しろ」
「そ、そうなの?」
「お前が俺のことちゃんと見てくれて隣にいるんだ、って思ったら安心したんだよ」
「剣城も俺のこと見てくれてるし剣城の隣に行くと優しく笑ってくれるから俺も安心するよ?」
ふわふわと笑う幼さの残る恋人を見て
あぁ、こういうのを何気ない幸せだと言うのだろうか
当たり前すぎて気付かない
だけど気付いてしまえばそれは毎日が幸せなのだということ
「松風」
「なに?」
「好き、だ」
「うっ、うん俺も!」
耳まで真っ赤な初で愛らしい恋人の手を握り返し兄の待つ病院へと急いだ―