01.鼓動(京天)

久しぶりに雪が積もった
肌に突き刺さるような痛く冷たい風が頬を通り過ぎていく
吐く息も真っ白で呼吸も辛い

けれど天馬ははしゃぎながら雪をかき集めていた。
それを少し離れたところで剣城が眺めている。
東京でも雪は降るがここ最近はなかなか積もるまではいかずアスファルトが凍り足元が滑りやすくなる程度だった。
しかし今日は珍しく積もった、雪を初めて見る天馬はそれはもう喜び
嫌がる剣城を無理矢理外に連れ出したのだ。

「見て見て剣城!雪だるま!」

「んー…あぁ…」

「もう少し反応してくれてもいいだろ…」

「…寒い」

「ゔ〜」

雪なんて珍しくもない
ただの冷たい結晶だ、そんなものかき集めて何が楽しいんだ?
心の中でそう呟き雪をかき集めて天馬に声をかけた

「おぃ、松風」

「え?…うぐっ!!」

見事、顔面に雪の玉が命中し
蛙でも踏み潰したような可愛いげのない声を発し天馬は剣城を睨み付けた

「なにするんだよ!」

「………帰る」

なんだかよくわからない…
わからない黒く渦巻いた感情が剣城を支配しだす

「ちょっ、剣城…
待ってよ!」

「……雪とでも遊んでろ」

「………」

だんだん自分がイラついてきているのがわかり一刻も早くこの場から逃げ出したかった

「つる…」

「じゃあな」

「剣城待ってよ…!」

背中に暖かいものがぶつかってきた
天馬が剣城を引き留めようと抱きついたのだ

「…離せ」

「やだ…帰らないでよ…」

剣城はチラリと視線だけ後ろに向けると泣きそうな天馬の顔が見えた

「はぁ……」

「うっ…ごめ…ん」

ぽろぽろと零れ落ちる小さな結晶は雪なんかよりも儚く綺麗に見えた

「悪い…、
雪に嫉妬した」

「え…?」

「お前が雪ばかりを見るから…」

「つるぎ……ごめ…」

「もぅ、泣くなバカ…」

天馬の正面に向きなおし
ぎゅぅぅっと抱き締めれば天馬の暖かい体温が黒く渦巻いた感情を消してくれた


…大好き剣城

知ってる

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -