水彩画の中のきみ


今日は雨で練習もそこそこにして部室に集まり今後のことを話していた
が、監督不在なのでみるみるうちに話は脱線してしまい皆、個人の会話を始めてしまった


「なぁなぁ速水」

「なんですか?」

「速水の視力ってどんくらいあんの?」

「し、視力ですか……
そんなの聞いてどうするんですか…」

「いや、眼鏡なしでも少しは見えるのかなって」

「何がです?」

「俺のこと」

「……ほとんど見えませんよ
俺の視力0.03とかなんで…」

「うっそッ!
なんでそんなに悪いんだよ!?」

「こ、声が大きいですよ…」

「あ…ごめん…
じゃぁ、どんぐらい近付いたら見える?」

「え?」

一瞬、何が起きたのかわからなかったが
だんだん全てが水彩画のようなにじませた世界になったと思ったらキスが出来てしまう距離に浜野くんの顔があり驚いてしまった

「ちょっと!
何してるんですか!」

「見える?」

「はぃ…?」

「この距離なら俺のこと見える?」

「ぁ…」

浜野くん以外のものは相変わらず水彩画のまま
何が何なのか誰が誰なのかもハッキリしない中、浜野くんだけはハッキリ見えている

「こ、こんなに近ければちゃんと見えてますよ…」

「そっか!」

「それより眼鏡返して下さいよ!」

「あ!悪い悪い」

ぁ…かけてくれるんだ
視界が水彩画からどんどんクリアになっていく

「あ、りがとうございます…」

「速水、」

「んっ」

頬に柔らかく暖かいものが触れ状況を把握するのに時間がかかった

あ、キスをされたんだ―

「は、浜野くん!?」

「あはは、つい」

「えっ…あの…」

誰かに見られたりしたらどうするきなんだろうとか
恥ずかしくないんだろうかとか
もう頭は真っ白になっていく…
ゆっくりと視線を周りにを向けたが誰もこちらをみていなかったので安心した

いつものように明るい笑顔で俺の頭を撫でている浜野くん
きっと眼鏡がなくても浜野くんだけはちゃんと見つけられるような気がした

水彩画の中でもきっと…



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