オレンジの香り


この時期は寒くて頬や手が痛くなるからキライだ…
サッカー棟でやれない部活は地獄だとさえ感じる。
たまたま部室から出てくる霧野先輩を見つけて
流れで一緒に帰ることになった。

「うぅ…寒い
本当にこの時期はイヤになりませんか?」

「まぁ、そうだな…
乾燥するし、髪の毛は痛むし」

『あんたは女子かよ…』

髪の毛先をいじりながらため息をつく先輩をみて
心の中でつぶやいた。
直接、言えば確実に殴られるからだ。

「そういえば先輩っていつもハンドクリーム持ってますよね?
やっぱ乾燥対策ですか?」

「ん?あぁ、
俺、手が荒れやすいんだよ
塗らないとすぐ切れたりするから」

「へぇ…大変っスね」

ちらりと見た先輩の指先は少し赤くて痛々しかった

「痛く…ないんですか?」

「まぁ…時々な」

先輩は指先を見ながらぽつりぽつりと答えてくれた

「そゆいう狩屋はどうなんだ?」

「え?」

「手、乾燥しないのか?」

「俺は…別に…」

ふと見た自分の手は先輩以上に赤くて痛々しかった
あれ?俺の手ってこんなだっけ??

「お前!俺より酷いじゃないか」

「べ、別に痛くないですから平気ですよ」

「何、言ってるんだ!いいからこれ塗れ!」

ずいっと差し出されたのは霧野センパイ愛用のハンドクリーム(チューブタイプのオレンジの香り)

「いいですよ!
俺なんかの手よりセンパイの手のほうが心配で…あ…」

「……」

・・・なに言ってんだ俺!!
うっわ、恥ずかしい…絶対顔、赤いし…

「あ、の…」

「……」

恐る恐る霧野センパイのほうを見るとセンパイも顔が真っ赤になっていた
な、なんで霧野センパイまで顔、真っ赤なんだよ…

「狩屋」

「は、はい!?」

「いいから、これ使え…」

「はい…有難う御座います…」

キャップを外すとふわっとオレンジの香りがした
あ、霧野センパイの匂いだと思ってしまう俺は末期かもしれない

塗り終わってハンドクリームを返そうとしたがセンパイは受け取ろうとしなかった

「霧野センパイ…?」

「それ、やるから治るまでちゃんと塗れ」

「えっ?
いいですよ!そんなっ」「センパイがやるって言ってるんだから素直に受け取れ使いかけで悪いけどな
じゃ、また明日な狩屋」

「ちょっ!霧野センパイ!?」

気付けばいつもセンパイと別れる曲がり角に着いていて
センパイは駆け足でこの場を去ってしまった。

「…本当にずるい」

霧野センパイはいつもそうだ何かと言うとセンパイという立場を利用していつもカッコつける…
少しは俺にもカッコつけさせて下さいよ…

これじゃどっちが彼氏かなんてわからないじゃないか
なんて呟いた声はオレンジの香りと共に風に飛ばされたー


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