一緒がいい


冷たい…
風が冷たすぎる

部活も終わりクールダウンした体にこの冷たさは厳しいものであった

「寒い冷たい痛い…」

こんな日はさっさと帰って炬燵に入ってテレビでも見てだらだら過ごしたい

「狩屋ー!」

「え…」

霧野先輩がこちらに向かって走ってくる
珍しいこともあるものだ
いつも俺のこと毛嫌いしてるくせに

「なんですか?」

「これ、お前のだろ?」

「あ…」

すっ、と差し出された物は簡単にラッピングされたマフィンだった
今日は調理実習があり
天馬くんたちと作ったのだが出来上がったら個数が多くて先輩たちに配ったあまりを今、差し出されている

「わざわざすみません…」

「別に、誰かにあげるんだろ?」

「…まぁ」

「調理実習かぁ…
俺も来週あるんだよな」

「へぇ…
なに作るんですか?」

「マカロンだって
女子はかなり盛り上がってたな」

あはは、と笑う先輩もその女子の一員ではないかと思ってしまったがそんなこと口が裂けても言えないなぁ、なんて思いながら歩き出した

「俺、マカロンって食べたことないんですけど
あれって美味しいんですか…?」

「俺は好きだけど
まぁ、好き嫌いは別れるかもなぁ…
多分、余るだろうから狩屋たちにもやるよ」

「え…」

たち、ってことはこの際どうでもいい
先輩が俺にもくれると言うことが嬉しくて驚いてしまった

「神童と同じ班だし失敗はないだろうからなぁ」

「………」

―ッチ
『神童』の名前が出たことでさっきまでの嬉しさが消えてしまった
その代わりにイライラした感情が占め歩くのを止めてしまった…

「狩屋?」

「…あまったらちゃんと下さいね
マカロン…」

「あ…あぁ」

「じゃあ俺、ちょっと用事
思い出したんでお疲れ様でした」

「狩屋?!」

これ以上、ここにいたらまた先輩に嫌味を言いそうになったから走って逃げ出した
後ろの方で先輩が何か言っていたけどもう何も頭には入らなかった







「はぁ…はぁ……
ムカつく」


キャプテンの名前が出るたびに先輩とずっと一緒なんだなとか
幼なじみとか…
全てが羨ましくて疎ましくて…
悔しかった

なんで俺は一年であの人は二年なんだろう
俺だって先輩とずっと一緒がいい―


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