貴方の一部


俺の目の前にチラつくサラサラしていそうなピンクのおさげ…それを見てるといつも思う

触れたい

と……


「霧野せんぱぁい」

「…………」

あ、物凄くイヤそうな顔をしてる

「そんなあからさまにイヤそうな顔しないでくれません?」

「何だ…?」

「え…あぁ、
先輩の髪ってサラサラしてそうだから
触りたいなぁって」

「お断りだな」

「……やっぱり」

わかっていた答えなのに予想外に心へのダメージが大きかった

「お前に触らせたら、何をするか解ったもんじゃないからな」

「えー何もしませんよぉ」

猫被りな表情に声色
だけど霧野先輩の目は俺を睨み付けたままだ

「先輩、そんなに怖い顔しないでくれません?」

「誰のせいだ」

「俺ですか?ひどいなぁ」

あ…
キャプテンが先輩のこと呼んでる

あぁ…
何でそんなに嬉しそうな顔するんですか…
ムカつく…


「痛ッ!」

先輩の不快に満ちた声で我に返った
俺の手の中には先輩の髪の毛が数本握られていた

どうやらキャプテンの元に行こうとした先輩のツーテイルを力いっぱい引っ張っり髪を引きちぎってしまったらしい

「狩屋ッ!?」

「ぁっ…
すみません……」

「狩屋…?」

何で急に心配そうな顔で俺を見るんだろう?
いつもみたいに怒って下さいよ…

「お前、何で泣いてるんだよ…」

「え……」

「泣きたいのはこっちなんだがな
それとも嘘泣きか?」

心配と呆れた感情が要り混ざった表情で俺の目の前にやってくる先輩

「嘘泣き…
そうだったら良かったんですけど
今回はマジ泣き…みたいです…」

止まらない…
何でなのかわからないけど
きっと先輩を傷付けてしまったことが悲しいんだ

「ったく…
少し休憩するか」

次は幼い子をあやすような優しい表情になった先輩は
俺の腕を引いて木陰まで連れて行ってくれた

「どうしたんだ、急に…」

「すみません…
髪……」

「あぁ…
確かに痛かったがそんなに気にすることじゃ…」

「………」

あぁもう
どうして涙が止まらないんだろう
先輩と一緒にいるのにカッコ悪―

「…先輩?」

何で先輩が俺の頭を撫でているんだろう?
信じられない光景が目の前に広がっている

「もういいから泣くな…
お前らしくないぞ」

俺らしくって
先輩、俺のこと詳しく知らないでしょ…

「………はぃ」

「じゃあ、俺は練習に戻るから
落ち着いたらこい」

「わかりました…すみません」

先輩は俺の頭から手を離しグランドに戻ってしまい
スーッと抜ける冷たい風が俺をすり抜けどこかに行ってしまった

ふと手元をみると
まだ指先に先輩の髪が絡んでいた



「先輩…ごめんなさい


大好きです」


貴方を傷付けて手に入れた
貴方の一部が手元にある

歪んだ俺を許して下さい―


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